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残滓

「……ねぇ」
つい、と頬を誰かが撫でた。
「ねぇってば……起きて?」
「う、んん……ん?」
促されるままにまだ重い瞼を上げれば、レースカーテン越しの日光が差し込んでくる。正直眩しいが……僕、昨日遮光カーテン閉めずに寝てしまったのだっけ。
「あぁ、おはよ……」
隣で僕の目覚めを見つめる君の頭をくしゃりと撫で、布団をふわりと跳ね除けた。
……「隣で僕の目覚めを見つめる君」だって?
「うおぁあ!?なっ……んで君が……!?」
焦って吸い込んだ夏の生温い空気に思わず咳き込んでしまった僕を、こてんと首を傾げて見る君。何で僕も、何の不思議も抱かずに君の頭を撫でたりしたんだ、なんて過去の自分を殴りたい衝動と、羞恥で顔が赤らむ感覚。
「いちゃ、ダメ?」
違うそうじゃない、と反射的に飛び出した言葉を飲み込み、スゥと深呼吸をする。
「ダメ、じゃない……けど……」
でも何で、という困惑が顔に出ていたのかもしれない。君はというと、不意に立ち上がったかと思えば
「ふふ、」
しなやかな指先で僕の眉間をなぞった。
「困ってるの、珍しーね。変な顔してる」
君が動く度に響く繊細な衣擦れの音と、ゆるりと弧を描く唇。
君の指先から伝わった熱は、まるで猛毒のように瞬く間に全身に回って、僕の頭を支配した。
その熱に名前をつけるなら____。
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