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残滓

りんご飴に口付ける様にして舐める君に惹きつけられる。
「んー……美味しい。甘い」
言葉は少なく拙いけれど、君の表情がどんなにか美味しいのかを物語っていた。
雑踏と祭囃子が、ほんの一瞬遠ざかる感覚。
気がつけば、僕は君の手を取っていた。
「えっ…あ、何……?」
珍しくも目を見開いた君に、漸く自分が何をしたのかに気づく。
「あっ、いや、何でもない。ごめん」
パッと離した左手に、2秒だけ、温もりが残った。
シャク、と軽い咀嚼音が左側で響く。りんご飴に反射した提灯の灯りが君の唇に触れた。ヒビが入ってパリパリと壊れて食べられていく様に、何故か愉悦を感じる。
「ねぇ、見過ぎ。恥ずかしい」
夏に浮かされた熱とはまた違う赤が君の頬に乗った。
君の唇に触れられる提灯の蜃気楼に
____嫉妬した。
そんなことを言ったら君は怒るだろうか。
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