魔王を滅ぼした人魚のお話
「私には、前世の記憶があるんです。といっても”何百年も前”ですが……私が住んでいた村には、とても優しい男の子がいたんです。ツノが生えていて、ニンゲンじゃない子だったんですけど。とっても優しかったんですよ……私が死んでしまうその時まで。彼はいつも私を助けてくれて。でもある時、彼の特異性を危険視した他国の兵が攻め込んできたんです。急なことだったから犠牲者も沢山出て……私もその一人でした。死ぬ時に、”怖いな、嫌だな……なんで私が”って思って。でもその時、彼が私を抱き上げたんです。大粒の涙をこぼして、”僕のせいでごめん”って。本当は死にたくなんてなかった。でも……彼のためなら、ってその時少しだけ思ったんです」
そこでハッとマオ……いや、アレグリアが顔を上げた。
「もしかして君は……イグニス、かい?」
訝しむような顔をしながら聞くアレグリアに、ルフレ……イグニスが肯定するように微笑んだ。その途端、アレグリアはくしゃりと顔を歪め、その目からは涙が出て溢れ出す。
「ほっ……本当は!人間に嫌われたくなんてなかった……出来るのなら仲良くしたかったっ。でも彼らは、僕が花束を持っていったって何をしたって、踏み躙って拒絶するんだっ……。僕が生まれた村は、過ごした街は、夢だったのかと思ったくらいだ……人間に何をされても、イグニスとお母様、村の人達の顔を思い出して、どうしても憎めなかったっ……僕を憎んだのは人間だけど、でも僕をあの時守ってくれたのもニンゲンなんだ……」
大粒の涙を溢しながら叫ぶアレグリアを、イグニスはそっと抱きしめた。
「ごめんなさい、あの時死なせてごめんっ、あの時好きだって言ってくれてありがとうっ……僕も、僕も君が好きだ!」
その言葉に、イグニスの瞳からスッと涙が零れ落ちた。
「……やっと、分かってくれた……この身体になってから、ずっとずっと海からアレグリアを探し続けてた。私の死に際に泣いて謝った貴方が、ずっと頭から離れなくて。あの涙が可哀想で、胸が苦しくて。……でも、やっと届いた」
あの日、とイグニスは続ける。
「アレグリアが私を助けてくれたのは偶然……よね、きっと。でも私は運命だって思う。この広い世界で、またアレグリアと会えるだなんて。……ずっと昔から、貴方の髪の色は変わらないのね。いつだって、希望の芽吹く様な、美しい新緑の色……」
そこでハッとマオ……いや、アレグリアが顔を上げた。
「もしかして君は……イグニス、かい?」
訝しむような顔をしながら聞くアレグリアに、ルフレ……イグニスが肯定するように微笑んだ。その途端、アレグリアはくしゃりと顔を歪め、その目からは涙が出て溢れ出す。
「ほっ……本当は!人間に嫌われたくなんてなかった……出来るのなら仲良くしたかったっ。でも彼らは、僕が花束を持っていったって何をしたって、踏み躙って拒絶するんだっ……。僕が生まれた村は、過ごした街は、夢だったのかと思ったくらいだ……人間に何をされても、イグニスとお母様、村の人達の顔を思い出して、どうしても憎めなかったっ……僕を憎んだのは人間だけど、でも僕をあの時守ってくれたのもニンゲンなんだ……」
大粒の涙を溢しながら叫ぶアレグリアを、イグニスはそっと抱きしめた。
「ごめんなさい、あの時死なせてごめんっ、あの時好きだって言ってくれてありがとうっ……僕も、僕も君が好きだ!」
その言葉に、イグニスの瞳からスッと涙が零れ落ちた。
「……やっと、分かってくれた……この身体になってから、ずっとずっと海からアレグリアを探し続けてた。私の死に際に泣いて謝った貴方が、ずっと頭から離れなくて。あの涙が可哀想で、胸が苦しくて。……でも、やっと届いた」
あの日、とイグニスは続ける。
「アレグリアが私を助けてくれたのは偶然……よね、きっと。でも私は運命だって思う。この広い世界で、またアレグリアと会えるだなんて。……ずっと昔から、貴方の髪の色は変わらないのね。いつだって、希望の芽吹く様な、美しい新緑の色……」