魔王を滅ぼした人魚のお話
「いやあぁぁぁ!」
町中に悲鳴が響き渡った。街の人々は、駆けつける間もなくその悲鳴の意味を知ることとなる。
「……戦争だ」
誰かがぽつりと呟いた言葉は、じわりじわりと広がって、人々の恐怖へと転じた。
町中が業火に焼かれ、そこかしこに嫌になる程赤が散った。
誰もが逃げ惑う中、一際大きな声が轟く。
「我々は隣国の軍兵である!異形の子を保護している神の敵どもめ!これ以上犠牲者を出したくないのなら、異形の子を差し出せ!さもなくば斬る!」
少年は悟った。これは人間ではない自分が招いた悪夢だと。自分のせいだと。
ギリギリと握りしめた拳には爪が食い込み、血が滲んだ。
「僕はここだ!今すぐ攻撃をやめ__」
「危ないっ」
一閃。敵前に駆け出した少年の目の前に迫った刃は、彼に届く事はなく。代わりというように、目の前に飛び込んできた影を両断した。
「なっ……んで……」
影はその場にドサッと倒れ込むと、少年に手を伸ばす。服が赤に塗れるのにも構わず、少年は彼女を抱き上げた。
「なんで、僕のことなんか……!僕の、僕のせいだっ……ごめんなさい、ごめんなさいっ……イグニス!」
フルフルと震える、イグニスと呼ばれた少女の指先をしかと握りしめ、少年は懺悔した。今迄にも己を疎ましく感じた事はあれど、かつてここまで強く呪った事はなかった。
もう満足に話せないだろうイグニスは、一生懸命に唇を震わせ
「 」
その最期の言葉は、少年にしか届かなかった。
「わかったっ……次は、次こそは僕が伝えるからっ……」
少年は、彼女に口付けた。彼女の魂を逃さない、というかのように。
これは、どこかの悲惨な物語。
実在するのかもわからない、ずっとずっと昔のお話____。
町中に悲鳴が響き渡った。街の人々は、駆けつける間もなくその悲鳴の意味を知ることとなる。
「……戦争だ」
誰かがぽつりと呟いた言葉は、じわりじわりと広がって、人々の恐怖へと転じた。
町中が業火に焼かれ、そこかしこに嫌になる程赤が散った。
誰もが逃げ惑う中、一際大きな声が轟く。
「我々は隣国の軍兵である!異形の子を保護している神の敵どもめ!これ以上犠牲者を出したくないのなら、異形の子を差し出せ!さもなくば斬る!」
少年は悟った。これは人間ではない自分が招いた悪夢だと。自分のせいだと。
ギリギリと握りしめた拳には爪が食い込み、血が滲んだ。
「僕はここだ!今すぐ攻撃をやめ__」
「危ないっ」
一閃。敵前に駆け出した少年の目の前に迫った刃は、彼に届く事はなく。代わりというように、目の前に飛び込んできた影を両断した。
「なっ……んで……」
影はその場にドサッと倒れ込むと、少年に手を伸ばす。服が赤に塗れるのにも構わず、少年は彼女を抱き上げた。
「なんで、僕のことなんか……!僕の、僕のせいだっ……ごめんなさい、ごめんなさいっ……イグニス!」
フルフルと震える、イグニスと呼ばれた少女の指先をしかと握りしめ、少年は懺悔した。今迄にも己を疎ましく感じた事はあれど、かつてここまで強く呪った事はなかった。
もう満足に話せないだろうイグニスは、一生懸命に唇を震わせ
「 」
その最期の言葉は、少年にしか届かなかった。
「わかったっ……次は、次こそは僕が伝えるからっ……」
少年は、彼女に口付けた。彼女の魂を逃さない、というかのように。
これは、どこかの悲惨な物語。
実在するのかもわからない、ずっとずっと昔のお話____。