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世界の終演を君に。

「っ……疲れた……」
最後の仕上げ、とEnterを押す。ガシャン、という音と共に、足元の西都タワーの明かりが消えた。
「う……流石に寒いな……」
連日の徹夜での準備に加え、急な身体の酷使に立っていられず、思わず座り込む。……とは言ってもここは西都タワーの最上階のその上、頼りない足場が少しあるばかりである。
「……あとは待つだけ、か」
ここまで来てしまえば、もう僕がすべきことはなかった。後は共犯者達が、担当の場所の起爆システムを確認し報告をくれれば良い話。各地からの報告さえくれば、Enterを押して……全部吹き飛ばす。このままいけば、夜明けを待たずに世界は滅びるはずだ。
確かに、この国中に爆弾を仕掛けたところで、世界全てを「物理的に」滅ぼすのは不可能だ。そんなことは最初からわかりきっている。けれど、それが「経済的に」だったとしたら?……可能である。
先進国であるこの国が物理的に沈めば、世界が天災や経済的混乱に陥るのは自明の理。いくら小さな島国といえども、地形が変わるほどの衝撃を受ければ、星全体のダメージは相当に大きいものになるはずだ。

「少し、休もう……」
無理が祟ったのか、正直もう目を開けているのすら辛いほどの疲弊を感じる。どうせもう芽依はここには辿り着けない。下には見張りがいて、更にこのタワーの頂上への電気扉は、電源が落とされて稼働しないのだから。
「ほんの少し、報告が来るまで……」
世界最後の休息は、不思議なほど穏やかな夜景の中に微睡んだ。
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