世界の終演を君に。
タワーへ真先に走り出した斗羽君に背を向け、タワーの東側へ回り込む。
「……やっぱりね」
そこには思った通り、共犯者らしい人の姿。おそらく私がタワーに侵入するのを防ぐためだったんだろうけれど。
もう既に、地に伏していた。
「ごめんね……結構いいとこに蹴り入っちゃったから、しばらく起きれないかも……」
もう1度ごめんね、と呟いて、北側へ向かう。
「……あと、6人」
**
__斗羽side
「っ……」
肺が痛い。1月の冷気は、こんなに殺意を持ったものだっただろうか。
「あと、4階登って……外に出れば……」
息も絶え絶えにPCを見る。本当は今すぐタワーの電源を落としてしまいたいけれど、そうすると非常階段の扉が動かなくなるから出来ない。
「急ぐしかない……か」
芽依がこのタワーに来る前に、早く電源を落とさなくては。
冷え切った階段の手すりを握った。
***
__??side
「おはよう、今日はどう?」
つぶらな瞳で、きゅ、と覗き込まれる。
「今日も大丈夫だって。もう学校だろ?」
「うん……でも今日は休む」
「も~、昨日もそう言ってただろ!俺は平気だからさ、いって来なって」
このやりとりも、何回目……いや、何年目だろうか。
「ほら、遅刻しちゃうから!」
「わかったよ……」
寂しげにトボトボ歩く背中を押し、半ば強引に「いってらっしゃい!」と見送る。
……これも、あと何日続けられることなのか。
この身体のことを何も知らされていない俺は、ずっとその怖さと戦っている。
今日「いってらっしゃい」って言ったら、もう会えないかもしれない。
明日「おはよう」って言ってもらえないかもしれない。
昨日の「またね」が最後かもしれない。
「っう、……」
不意にヒュ、と喉が鳴って、目の前が見えなくなる感覚。息が出来なくて、音も聞こえなくて。最初は怖かったけれど、結局はこれにも慣れてしまった。
「最近増えたなぁ……」
どこか他人事のように呟いてみる。他人の事だと思っていれば、遠ざけておけば、まだ先延ばしに出来る気がするから。
「だからっ……泣いちゃダメ、だろっ、……俺!」
まだ泣く時じゃない。まだ死ぬ時じゃない。
「あいつ、まだ俺がいないと全然ダメだし」
あの屈託のない笑顔を、声を、「凪斗!」って呼んでくれる日々を失うわけにはいかない。
俺と斗羽は、絶対引き剥がされてなんてやるもんか。
どうせ死ぬのなら、精々足掻いてから死んでやる。
「俺と斗羽、舐めんなよ。カミサマ」
「……やっぱりね」
そこには思った通り、共犯者らしい人の姿。おそらく私がタワーに侵入するのを防ぐためだったんだろうけれど。
もう既に、地に伏していた。
「ごめんね……結構いいとこに蹴り入っちゃったから、しばらく起きれないかも……」
もう1度ごめんね、と呟いて、北側へ向かう。
「……あと、6人」
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__斗羽side
「っ……」
肺が痛い。1月の冷気は、こんなに殺意を持ったものだっただろうか。
「あと、4階登って……外に出れば……」
息も絶え絶えにPCを見る。本当は今すぐタワーの電源を落としてしまいたいけれど、そうすると非常階段の扉が動かなくなるから出来ない。
「急ぐしかない……か」
芽依がこのタワーに来る前に、早く電源を落とさなくては。
冷え切った階段の手すりを握った。
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__??side
「おはよう、今日はどう?」
つぶらな瞳で、きゅ、と覗き込まれる。
「今日も大丈夫だって。もう学校だろ?」
「うん……でも今日は休む」
「も~、昨日もそう言ってただろ!俺は平気だからさ、いって来なって」
このやりとりも、何回目……いや、何年目だろうか。
「ほら、遅刻しちゃうから!」
「わかったよ……」
寂しげにトボトボ歩く背中を押し、半ば強引に「いってらっしゃい!」と見送る。
……これも、あと何日続けられることなのか。
この身体のことを何も知らされていない俺は、ずっとその怖さと戦っている。
今日「いってらっしゃい」って言ったら、もう会えないかもしれない。
明日「おはよう」って言ってもらえないかもしれない。
昨日の「またね」が最後かもしれない。
「っう、……」
不意にヒュ、と喉が鳴って、目の前が見えなくなる感覚。息が出来なくて、音も聞こえなくて。最初は怖かったけれど、結局はこれにも慣れてしまった。
「最近増えたなぁ……」
どこか他人事のように呟いてみる。他人の事だと思っていれば、遠ざけておけば、まだ先延ばしに出来る気がするから。
「だからっ……泣いちゃダメ、だろっ、……俺!」
まだ泣く時じゃない。まだ死ぬ時じゃない。
「あいつ、まだ俺がいないと全然ダメだし」
あの屈託のない笑顔を、声を、「凪斗!」って呼んでくれる日々を失うわけにはいかない。
俺と斗羽は、絶対引き剥がされてなんてやるもんか。
どうせ死ぬのなら、精々足掻いてから死んでやる。
「俺と斗羽、舐めんなよ。カミサマ」