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世界の終演を君に。

_見つけた。
それは唐突だった。彼が、何を憎んでいるのかを見つけたのだ。普通に考えたら簡単なことだったのが、考えすぎたせいで遠回りをしてしまっていたのだ。

小さい頃からずっと一緒で、「その人」を救うためだけに努力してきたというのに。
それが他者に……世界に、神に、奪われたら?

……きっと、大半の人は悲しんで、絶望して_諦める。だって、どうにもならないから。
けれども、賢い彼は違った。

凪斗のためだけに生きてきたのに
凪斗のためだけに努力してきたのに
僕から凪斗を奪う世界なんて……「いらない」

きっと、そう思ったんだろう。
たった1人の、もういない人間のために、世界を滅ぼそうとしているのだ。
なぜ確証があるかって?
……見たからだ。
何かをノートに書き留める手の動きを、何かを呟く口の動きを、何かをPCに打ち込む手の動きを。
正直、怖かった。なぜそこまでするのか……もういない人のために。
私には出来ない。実行も、理解も。そう思った。
それ故に、また、惹きつけられた。

彼は、テロリスト。
恐らくは、電波塔をハイジャックして通信機器を停止させ、各地に設置した遠隔操作型の爆弾を起爆させようとしている。
それが上手くいけば……この国のみならず、きっと世界は崩壊する。
勿論、共犯者達がいるのだろう。1人で爆弾を設置することは出来ないから。
でもきっとその人達は……死ぬことなんて怖くないんだろう。それは彼も然り。

__彼を止めたい。
それは願い。それは祈り。
……なんていうのは嘘で。
本当は、彼に私を見て欲しかっただけ。凪斗くんが去ってから、彼の瞳には何も映っていなかった。ただただ、空虚がそこにあるばかり。

それが、面白かった。
でも。
それ故に、欲しくなってしまったのだ。……彼自身が。
何も映らない彼の瞳に、私を映すことが出来たなら、そんなに面白いことはない。
じゃあ、彼の目に映るには?
……止めるしか、ない。
だから私は彼を止める。世界を救ってみせる。

全ては、私の欲望のために。
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