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世界の終演を君に。

「……いつから知ってたんだ?」
漸く絞り出した声は、情けなくも震えて掠れていた。そんな僕の様子を見てか、芽依は更ににっこりと笑う。
「今は……まだ秘密。私が貴方を殺す時に教えてあげる」
それが単なる脅し文句ではないことくらい、僕が1番よく知っていた。
「1つ、賭けをしない?」
どこか弾んだ様な声で、彼女が言う。
「……賭け?」
「そう、賭け」
普段の温和な彼女には、とてもではないが似合わない言葉。でも今は、その身に纏う不穏な空気から、不思議と違和感は感じられなかった。
「貴方が世界を殺すのが先か、私が貴方を殺すのが先か。”互いが持てるもの全て”を使って、先に目的を達成した方が勝ち。貴方が勝てば、世界は終わる。私が勝てば、貴方は死ぬ。……楽しそうじゃない?」
生憎と、そう言って笑う彼女ほど、常識を失ったつもりはない。でもまあ、
「……悪くない。乗ったよ、その賭け」
断るなんて道は、すでに残されていなかった。

「ルールは、さっき言った通り。”互いが持てる力全て”を使って、自分の目的を達成するの。タイムリミットは……夜明け。いいかな?」
「あぁ……ゲームスタートも、君に任せる」
「わかったわ。じゃあ、今は17:47だから……18:00にスタートしましょうか」
傍目には、とても今から命と世界を賭けた者同士の会話とは思えないだろう。声色も顔も、余りにも淡白すぎるが故に。
……それにこの夕暮れ時に、西都タワーの下で向き合っていれば、もしかしたら恋人同士なんかに見えるのかもしれない、なんて。
_馬鹿馬鹿しい。
どうせ世界は、今夜で終わる。僕が終わらせる。それに、僕はもうこの世界が大嫌いになったのだ。そんなつまらない想像に費やす時間なんて、微塵も無かった。

「精々頑張ってね、”テロリスト”さん」
「そっちもな、”殺人鬼”」
芽依の声に背を向け、西都タワーへと駆け出した。
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