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世界の終演を君に。

「じゃあな!」
「また明日~」
そんな声に返事もせずに背を向け、足早に家へと向かう。
いつもなら友達とだべってから、ふらりと街を歩いて家に帰るのだが。
生憎と、今日はそんな余裕はなかった。
__残念だけど、お前らにはもう「明日」はないから。
頭に浮かんだ、そんな厨二くさい台詞を口に出す程気障な人間ではないつもり。
と、誰にともなく言い訳をしながらただ歩く。
まあそもそも、「明日」がないのは僕とて同じこと。
家の扉を開けながら、そう呟いた。
__何故って?それは、後でのお楽しみ。
手早く着替えやら何やらを済ませ、小さめのリュックサックにスマホとノートPC、それから財布を突っ込んで、
「ちょっと出かけてくる」
と母さんに声をかける。
__もうこの家に入ることも、母さんの顔を見ることもない。
途端に、昨日までに固めたはずの決心が大きく揺らいだ。
……揺らぐ?
あまりの自分の弱さに、思わずはは、と笑いが零れる。
__こんな世界いらないって、消えてしまえって、あれだけずっと願ってきたじゃないか。
グッと拳を握りしめ、玄関の扉を開ける。
「じゃあね」
呟いた別れの言葉は、誰にも届かずに風に消えた。

*

タタン、タタン。
軽快なリズムに身を任せながら、窓の外の景色を眺める。
__この夕陽も、電車も、人も、今夜全て俺の手で……。
高揚する鼓動とは裏腹に、胸の奥がズキン、と痛んだ。
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