世界の終演を君に。
「僕、これからどうしようかな」
「急にどうしたの」
「だってテロリストだからな。バレたら無事じゃいられない……まあ、どこぞの殺人鬼のおかげで未遂だけど」
「よく言うね。私だって未遂だよ?……まあ、1つ私が言うならだけれど」
しかと朝日を見据えるその顔は、強くも繊細で、美しかった。
「君は、生き急ぎすぎている。これまでの何年間かで嫌というほど未来だけを目指し続けたんだから、少しは今のことも見てあげたら?」
未来だけを目指し続けた……その言葉にハッとする。
「……それもそうだな」
「ま、とにかく”生きてさえいればどうにだってなる”……なんてね」
ビルの窓が、あざやかな緋色に輝く。
「何かあったら、私が助けてあげる」
「全く、よく言うよ。さっきまで殺そうとしてた相手を助ける?……よろしくな」
「馬鹿なことに拘ってないで、早くタワーから降りるよ、自殺志願のテロリストさん」
「はいはい、殺人鬼さん」
誰もいなくなった西都タワーに、凪の様な風が1人、くるりと舞った。
世界の終演を君に。〜END〜
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