このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

世界の終演を君に。

そこには吸い込まれるような空と、芽依の笑顔だけがあった。
「……え」
「はい、これで引き分け」
呆けた様な声が溢れる。
「なん、で」
ドスン、と尻もちをついた衝撃が、思い出した様にジワリと広がった。
「なんでって、ほら、見て?」
芽依の目線の先から、薔薇の様な赤い光が水平線からのぞき始める。

……夜明け。ゆっくりと、しかし着実に広がる朝の気配。

「私、言ったでしょ。貴方が世界を殺すのが先か、私が貴方を殺すのが先か。”互いが持てるもの全て”を使って、先に目的を達成した方が勝ち。貴方が勝てば、世界は終わる。私が勝てば、貴方は死ぬ』って。君は、世界を殺せなかった。だから君は勝てない。でも、タイムリミットは夜明けって言ったでしょ?残念だけど、私が斗羽くんを殺す前に、朝が来ちゃった」
残念だね。そう言った彼女は、微塵も残念だとは思ってなさそうに笑った。
「貴方は私に勝てなかった。私も貴方に勝てなかった。だから、この賭けは引き分け。まあ、もし勝者を決めるとすれば……」
彼女が不意に空を見上げる。
「……”彼”かな」


夜が、明ける。
こうして一夜のうちに繰り広げられた、たった2人の世界を賭けたデスゲームは、幕を下ろした。
16/17ページ
スキ