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世界の終演を君に。

かくん、と足から力が抜け、その場に崩れ落ちるように座る。

知っていた。僕がこうするのを、凪斗が望んでいないことくらい。だって凪斗はすごく優しいから、きっとダメだって言うだろうことなんてわかっていた。
それでも、こうでもしないと耐えられなかったのだ、凪斗がいない世界に。

去年の夏から、すごく入念に計画を練った。付け焼き刃ではあるが知識をつけ、セキュリティや予想被害範囲を計算し、爆弾を仕掛けた。裏サイトや裏社会の下っ端を洗い出し、片っ端から使い潰した。手間も時間も、すごくかかった。

 

でもそれも、全部白紙だ。



ノートPCを、タワーの下へ投げ捨てる。これで、終わりだ。なぜ全てを棒に振れるのか。そんなのはわかり切った答えだろう。凪斗が、僕の全てだっただけのこと。凪斗のためなら世界を滅ぼせるし、凪斗のためなら犠牲を厭わないのだ。
それがきっと、僕の敗因。背中に手を当てられる感覚に、そんなことを思う。今僕はタワーの端に立っている。そこをトン、と押されて仕舞えば、もうそれだけで済む話だった。

「僕の負けだ」
凪斗の分まで生きられなくてごめん、と祈るように呟いた。
「そうだね、斗羽くんは世界を滅ぼせなかった」
「あぁ、これで芽依が僕の背中を押せば、芽依の勝ちだ」
「もうあとは押すだけだね」
「早くやってくれよ」
「任せて」


背から不意に手が離れ……3、2、
ぐるり、と視界が反転した。
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