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世界の終演を君に。

『久しぶり……になるのかな』
あの日からもう一度聞きたいと請い願ってきた凪斗の声が流れ出す。
『これを聞いてるってことは、俺はもう……いないんだよね。とりあえず、これがいつか斗羽の役に立つよう、遺します。ははっ、さっきまで一緒にいたのに、なんか恥ずかしいな』
照れ臭そうに笑ったその声は、当たり前だけれど記憶のそれと全く一緒で。じわり、と視界が滲むのが分かった。
『えーと、な?斗羽には、とりあえずお礼を言いたい。ずっと俺の親友でいてくれてありがとう。それから、勝手にいなくなってごめん。俺は斗羽と親友でいられるのは本当に幸せだと思ってるし、ずっと一緒にいたいと思ってる。でも、うん、無理だったって、ことだよな……ごめん。』
「うっ……ぐ」
溢れ出す嗚咽を漏らすまいと、唇を強くかみしめる。
『この間、っつっても斗羽にとっちゃ昔のことだろうけど……この間、俺が斗羽に、”俺がいなくなったらどうする?”って聞いたよな。覚えてるか?あの時斗羽、俺に”縁起でもないこと言うな”って怒った後、”世界を滅ぼして俺も凪斗のところに行く”って言ったんだぞ?怖えーよ』
ふはっ、と凪斗が心底面白そうに吹き出す。
『まあそんな斗羽をみてな、俺は思ったわけ。”こいつ、俺が死んだら本当に付いて来そうだな”って。いや、嬉しいよ?俺のこと大事に思ってくれてるわけだし。でもな』
ふぅ、と一呼吸の間。

「斗羽が俺を大事なように、俺だって斗羽が大事なんだよ」

そう言った凪斗の声は、とてもとても苦しげで。
『おいていったのは……ごめん。本当にごめん。斗羽が悲しむのも、斗羽が傷つくのも嫌だ。俺のせいでっていうのは、もっと嫌だ。けどな……斗羽が悲しくても、苦しくても、生きていて欲しい。周りを傷つけるようなことはして欲しくない』
その言葉に、ハッと息を呑んだ。
『いや、どの口が言ってるんだって話だよな。ごめん。流石に俺も真に受けたわけじゃないけど、俺のために世界を滅ぼすなんてことはして欲しくないし、ましてや俺を追うなんて絶対だめだ』
ぎゅ、と拳を握る。

『俺の分まで、生きてくれ。それで斗羽がじじいになったら、俺から迎えに行ってやるよ、な?』
堪えきれなかったそれが、ボタボタと足元に染みを作った。
『まあ、そういうことだからさ。これはー……そうだな、親父にでもデータを渡しとくよ。間違っても、こっちには来るなよ!来ちゃダメだからな。…………じゃ、俺からは以上ってことで。またな、斗羽』
少しのホワイトノイズの後に、ふつり、と録音の音が途切れた。
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