世界の終演を君に。
「チェックメイトと行こうか」
少しキザに、そんなことを言ってみる。そうでもしないと、未知数の彼女の力に、恐怖で震えてしまいそうだったから。
「芽依は、僕に勝てないよ」
何も言わずに微笑んでいる彼女に、思わず口を開いた。
「だって僕はこのPCのボタンを押すだけで勝てるんだ。君は僕に飛びかかるなりして息の根を止めなきゃならない。ただでさえ男女の体格差があるんだ。僕の勝ちだね」
こんなことを言っても意味がないことなんて、僕自身が1番分かっている。けれども話さずにはいられない。
沈黙が、今はただただ恐ろしい。
「でも、斗羽くんがPC起動させるまでの時間もあるでしょ?」
ようやく、芽依が話し始める。ネオンも少ない早朝を背に語る彼女は、小さいながら大きいような、不思議な雰囲気を纏っていた。
「それでも芽依が僕を殺すより早く世界が滅ぶさ」
「もし私がPCを奪ったりしたら?」
「遠隔スイッチを用意してないわけないだろ」
「じゃあ手を砕くとか」
「手じゃなくたってスイッチは押せるさ」
「どうしても世界を滅ぼしたいの?」
「何回言わせるんだ、そうに決まってるだろ」
「凪斗くんが愛した世界でも?」
「その世界が凪斗を殺したっていうのに?」
どうして今になってそんなことを、という僕の問いは、彼女がポケットからスマホを取り出す衣擦れの音に遮られる。
「君は絶対に……勝てないよ。私にはこの”切り札”があるから」
そう言って彼女は、スマホの画面をタップする。
「それでも俺は……」
「静かに」
言い訳じみたことすら言わせてもらえないのか、と卑屈になりかけた頃。
『あ、えっと……斗羽?』
スマホから聞こえたのは、凪斗の声だった
少しキザに、そんなことを言ってみる。そうでもしないと、未知数の彼女の力に、恐怖で震えてしまいそうだったから。
「芽依は、僕に勝てないよ」
何も言わずに微笑んでいる彼女に、思わず口を開いた。
「だって僕はこのPCのボタンを押すだけで勝てるんだ。君は僕に飛びかかるなりして息の根を止めなきゃならない。ただでさえ男女の体格差があるんだ。僕の勝ちだね」
こんなことを言っても意味がないことなんて、僕自身が1番分かっている。けれども話さずにはいられない。
沈黙が、今はただただ恐ろしい。
「でも、斗羽くんがPC起動させるまでの時間もあるでしょ?」
ようやく、芽依が話し始める。ネオンも少ない早朝を背に語る彼女は、小さいながら大きいような、不思議な雰囲気を纏っていた。
「それでも芽依が僕を殺すより早く世界が滅ぶさ」
「もし私がPCを奪ったりしたら?」
「遠隔スイッチを用意してないわけないだろ」
「じゃあ手を砕くとか」
「手じゃなくたってスイッチは押せるさ」
「どうしても世界を滅ぼしたいの?」
「何回言わせるんだ、そうに決まってるだろ」
「凪斗くんが愛した世界でも?」
「その世界が凪斗を殺したっていうのに?」
どうして今になってそんなことを、という僕の問いは、彼女がポケットからスマホを取り出す衣擦れの音に遮られる。
「君は絶対に……勝てないよ。私にはこの”切り札”があるから」
そう言って彼女は、スマホの画面をタップする。
「それでも俺は……」
「静かに」
言い訳じみたことすら言わせてもらえないのか、と卑屈になりかけた頃。
『あ、えっと……斗羽?』
スマホから聞こえたのは、凪斗の声だった