はじまり
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目を覚ますと、もうすっかり辺りは暗くなっていた。
「えっ、もう真っ暗!私どれくらい気絶してたんだろ。まさか1日2日経ってたりしないよね」
あのままぬかるみの中で息絶えるのではないかと思ったが、なんとか生きていた。死という恐怖を味わったのは初めてだった。
「くみちゃんどうしたかな。私が来なかったから怒ってるかな。ぬかるみに吸い込まれて気絶したって言っても信じてもらえないだろうな」
スマホを取り出し時間と連絡が来ていないか確認する。
時間は9時。日付は今日のまま。連絡は圏外になっていて誰からも来ていなかった。
「圏外?ここに着いた時は連絡できたのに」
そこで私はハッとする。
泥だらけになっているはずの私のスマホが普通に使えている。
そもそも自分の身体が泥一つ付いておらず綺麗なままだったのだ。
「どういう事?もしかして夢だったのかな」
自分がボケたのではないかと心配になってくる。
私は今日、後輩のくみちゃんと神社に行く約束をしてここで待ち合わせをしていた。この場所は間違いなく七頭龍神社だ。
「変な物音がして後を追ったらぬかるみにはまって...。いや、服も靴も汚れてないからぬかるみにははまってなかったのか。えーと、じゃあ物音までが現実?」
取り合えず携帯の回線が届く所まで移動することにした。
「ガサガサ」
またあの物音だ
「...」
辺りは真っ暗で怖くて昼間の様に声が出なかった。
声を押し潰しながらその物音を立てる"何か"が何処かへ行ってくれるのを願った
「ガサガサガサ」
だがどんどん近付いてくる
「ガサガサガサガサ」
恐怖に堪えられなくなった私は鳥居に向かって走った。
「やめてやめてやめて!神さま神さま!!」
無我夢中で鳥居まで走ったが、その物音はもうすぐ側まで近付いていた
その"何か"は私の足首を掴み私は躓いてしまった
自分の足首を掴んでいる物がなんなのか気にはなるが恐ろしくて見ることは出来なかった。
ただひたすら目を瞑り拳を握りしめた。
その間に"何か"は私の身体を這い上がり、首もとに手をかけてきた
「私、今度は本当に死ぬのかな」
私って結局なんの為に生きてたのかわからなかったな
お父さんお母さんは私を産んで幸せだったかな
ろくに親孝行も出来ずごめんね
色々な考えを巡らせていた時、ズシャーッ!!という大きな音と共に私の上に乗って首を絞めていた"何か"が目の前へと飛んでいった
「えっ?!」
何が起こったのかさっぱりわからないが、どうやら私は助かった様だ
呆然と飛んでいった"何か"を見つめていると後ろから足音が聞こえてきた
その足音の主は私の目の前に姿を現した
「あんたさー、なんで反撃しないの?」
冷たい口調で話すその子は、薄むらさきの癖っ毛髪に紫のパーカーを着た中学生位の男の子だった
「あ、あの、反撃...怖くて。あ、えっと、助けてくれてありがとう...」
男の子は私の言葉に眉をしかめる
「助けた?まあそうなるのか」
そう言うと私の手を掴み、身体を起こしてくれた
だが、まださっきの恐怖が残っていて足に力が入らずそのまま座り込んでしまった
「はあ。めんどくせーなー」
「ご、ごめんなさい」
年下に呆れられてしまった
「あんた名前は?」
「あ、あかり」
「ふーん。あかりか。まあ、これから宜しくな」
これから?どういう事だろう?
「あの、きみの名前は?」
「オレはちあき。呼び捨てでいーから」
ちあき君か。呼び捨てでいいと言われても命の恩人だし、初対面からは中々呼びにくい
「えっと。ちあき...君。さっきちあき君がやっつけてくれた動物?人?って一体何?」
「あれはゴミだよゴミ。特に意味のない物体かなー」
ゴミ。ちあき君からすればそうなんだろうけど、何か違う気がする
「ゴミが人を殺そうとするの?」
「人っていうかー」
ちあき君は何かを言いかけたがそのまま口をつぐんだ
「まあ、ゴミ達にも欲望があってさ。それを満たす為にはあかりの首が必要なんだよねー」
「え?!私の首?!」
だからあの時首を絞めてたのか。でもなんで私なの?他にも沢山人がいるんだし、私じゃなくたって。
ていうか今聞き捨てならない事を言ったような
「ゴミ...達?さっきの生き物ってこの世にまだ沢山いるの?」
「うん。めちゃくそいるよ。夜行性で夜に動きだす。そいつら全部あんたの首狙いに来るだろうね」
何それ。なんでこんな事になったの。
今までただ平凡に暮らしていた人生だった。その何もない毎日が嫌だったけど、今となってはそんな何もない毎日が幸せだったのだという事に気付く
絶望しているとちあき君が笑いながら言った
「まあそんな落ち込むなよ。オレはあんたの護衛をする様言われてここにいるんだからさ」
そういえば、これから宜しくって言ってたっけ。護衛をする様にってこの子、誰かの下で働いてるって事?
結構大きい組織なのかな
「取り合えずあかりはオレと一緒にトランプの城まで来てもらうから」
「トランプの城?!初めて聞いたけど。そんなお城どこにあるの?」
「えーまじ?トランプの城知らないってあかり本当に異国人なんだな」
「異国人?私は日本人だよ」
ちあき君は私の身体を持ち上げ、自分の肩に乗せ走り出した
「オレも詳しい事情はよく知らねーけど、あかりは別世界の人らしいじゃん」
「べ、別世界?あの、ちあき君重くないの?」
「全然」
涼しい顔をしながら肩に私を乗せて走っている
私を殺そうとしてきた生き物も簡単に倒しちゃうし、見た目は小さな男の子だけど凄い強い子なのかも
小さなナイトに守ってもらいながら、その日の夜を凌いだ
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