このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

銀河

真っ暗な道。真っ直ぐに進む道を照らしているのは、自転車のライト。夜深いこんな時間に高尾は自転車を漕いでいた。後ろにはリアカー、そしていつも通り緑間が乗っている。街灯や、珍しくも電気のついた部屋の灯りが見える街を背に、ただひたすらにペダルを漕いでいた。

風呂から上がった高尾は携帯のディスプレイに緑間の名前を見つけた。着信一件、メールが一件。もう日付が変わる頃だというのに、どうしたのかとメールの方を開く。
自転車で今すぐ来い
簡潔に書かれたそれに疑問を感じながらも、高尾は緑間の元へと向かった。到着するなり緑間はリアカーへどっかりと座り、ここから少し離れたところにある丘の上の公園へ連れて行けと言った。訳のわからないまま押し切られ、高尾は取り敢えず自転車を漕ぎ始めた。

車輪の音が夜道の静けさを際立たせる。毎日のように聞いているガラガラという音が今は少し煩わしかった。
「ねぇ、UFOでも見えるの?」
「さあな」
二人は白い息を吐きながら他愛もない会話をする。丘に近づくにつれ、だんだんと家の数も減ってくる。高尾はさっきよりも少し大きな声で話し始めた。冬の夜は寒いから、ホッカイロを持ってきてよかったと笑った。

丘の上の公園に着いた二人は街を見下ろした。近くの自販機で買ったおしるこが暖かい。高尾の手袋からじんわりと掌に熱が伝わっていく。おしるこを飲んだ後の口の中はひどく甘く、吐く息は一段と白くなっていた。
それから、白い息を追うように空を見上げた高尾は目を見開いた。
「真ちゃん・・・UFO、見えないじゃん」
「UFOが見たいのなら、そう願えばいいのだよ」
二人が見上げた先にあったのは、流れる星屑。街灯の多い家の周りでは、こんなに綺麗には見えないだろう。
まるで銀河に溶け込んだと錯覚させるようなキラキラの空に、言葉も無くただただ見上げる高尾。その姿を横目に、緑間は満足そうに白い息を吐いた。
ひとつ、またひとつと落ちていく光に、手が届かないかとゆっくり左手を伸ばしてみた。
1/1ページ
    スキ