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君の手

何度見たかわからないアイツのボールを撃つ姿は相変わらず綺麗だと思った。アイツがこれをものにするまでどんだけ苦労したかなんて俺の知ったこっちゃねえ。俺だってバスケ好きだし、息すんのとバスケすんのなんて同等みてーなもんだ。でもよ、こんだけ努力出来るなんて、やっぱすげえよ。


いつも通り自主練を終えた俺は左手の指に綺麗にテーピングを巻く。最初こそは綺麗に巻けずどうしたものかと思ったが、今ではもう慣れたことだ。
しかし、それを青峰がやってくれている。どうしたのだよ。
確かにおは朝で、意外な人から親切にされるかも。素直に受け取っておこう。と言われた。そしていつものようにラッキーアイテムを持って来ている。だが、持って来ているというよりは、いつも身に付けているものだった。テーピングがラッキーアイテムとはな。

「おい、少し曲がっているのだよ」
「……っだあー!!お前いっつもこんな面倒なことしてんのかッ!!」
指は大事だからな。それにテーピングが曲がっていると生活に支障をきたす。
「綺麗に巻けないなら自分でやるのだよ」
「いや、もうちょい貸しとけ」
青峰はむすっとした顔で言った。負けず嫌いは人一倍、と思ったがこの部はそんな奴等で溢れている。でも、負け知らずな青峰が四苦八苦している姿はなんだか微笑ましかった。思わず頬が緩む。

「おっし、こんなもんだろ」
何時もより大分時間が掛かって終わったそれは昨日より少しキツく、少しだけ暖かかった。
「大事にしろよ、お前のシュートかっけーんだから」
そう言って俺の指を離れる青峰の手を捕った。口の端を釣り上げて笑っていた顔が、驚きに変わる。表情が豊かで羨ましいと思っていた。
「……緑間?」
出会ったばかりの頃はお前の手は一回りも大きかった。その手を唇へ引き寄せる。
ちゅ、と音をたててやれば、頬を紅く染めた。
「ふっ、変な色なのだよ」
「うっせ……変な事すんな」
その手に指を絡めて、青峰をじっと見ると、居心地が悪いのか視線を外される。くすぐったい気持ちになり、ぎゅっと利き手に力を入れる。

「知ってるか?俺の手はお前の手よりデカくなったのだよ」

青峰は少し悔しそうな顔の後に目を伏せて、知ってる、とだけ呟いた。
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