100day Challenge

7.サク♂サソ

2024/09/28 23:40
SS
 


 ※ サクラ男体化、サソリ上忍if





 任務の帰り道。空模様が何やら怪しくて、急いで帰っていたけれど。

「チッ……クソ」

 パタ、と顔に落ちてきた水滴。みるみるうちに勢いを増したそれは、ザアザアと勢いを増して地面を叩く。
 急いで商店の軒下に入ったが、少し濡れてしまった。とうに寂れた集落で、廃墟のようなモンだったが雨を凌げる程度の屋根はあった。ここを過ぎればすぐ砂隠れだが……。報告の為にわざわざスコールのような激しさで降り注ぐ雨の中を走り抜ける必要もないかと理由付けて、軒下に甘んじた。

「……サソリ?」
「……“さん”を付けろ、小僧」

 同じように雨宿りなのか、軒下に踏み込んできた男を目にしてオレは眉を顰めた。
 春野サクラとかいう、いけ好かねえ木ノ葉の忍だ。見た目はまあ、悪くねえ(芸術作品くぐつにする価値があるという意味で)が……反抗的な態度だったり、オレの調合した毒を解毒しやがったり……とにかく気に食わない奴だった。同盟を組んでいるとはいえ他里の忍だ。関わり合いは少ないが、それでもオレのサクラへの好感度は低かった。

「メルヘンゲット……!」
「はぁ?」
「い、いや何でも。サソリは任務帰り?」
「……あぁ、そうだ」

 小さく呟くその言葉が聞き取れず聞き返すが、誤魔化された。それにムッとしながらも小僧からの問いに返事をする。
 その後もぽつぽつと雑談が続く。気まずくなるかと思われたがそうでもない。何となく肩透かしを食らった気分だった。

「でも良かった、サソリが居てくれて」
「……雨宿りぐらい、一人でも出来るだろ」
「違うよ、そうじゃ……なくて」
「なら、どういう意味だ」

 雑談の間の静寂に、小僧からぽろりと零された言葉。つい気になって深く聞いてみた。それがどんな効果を齎すのかも分からずに。

「あ……会いたかった、から」
「は、」

 桜色に染められた頬と震える語尾。驚きで絶句してしまう。その言い方だと……まるで、コイツが、オレを。

「じ、じゃあまた!」
「おい、待……ッ」

 走り出そうとしたサクラを追おうとして足と、ついでに伸ばした手を止める。追い掛けて何を聞くってんだ? 今の言葉の真意? 気にならないかと言えば嘘になるが……。逡巡したが結局オレは、一歩大きく踏み出した。

 いつの間にか、空は晴れていた。




 

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