100day Challenge
4.トビサソ
2024/09/25 18:06SS
「サソリせんぱーい!」
「……ノックぐらいしろ」
部屋のドアが開け放たれ、明るい声と共に侵入してきたのはトビ。暁の正規メンバーではなく見習いという立場だが、自由にアジトを出入りできるらしく、時折こうしてオレの部屋を訪れる。
「まぁた傀儡の調整ですかぁ? 少しは外出ないとカビ生えちゃいますよー」
「余計な世話だ」
そんなこと思ってもいない癖に、忠告じみた苦言を呈しながら後ろから覆い被さってきたトビ。オレの身体が僅かに硬直する。それも見通されたようで、耳元でクスクス笑い声がする。
これがデイダラや他の奴等なら怒鳴って部屋から追い出して終わりだ。だが……。オレが何をされても、この男に強く出られないのは。
「あ! コレ、着けてくれたんスね?」
オレの耳に装着されたイヤーカフに気づいたトビが、嬉しげな声音で耳輪に、金属製のそれに触れる。
先日、何の気紛れかトビからプレゼントされた物だ。デザインも悪くないし、何よりコイツが煩いだろうと思ったから着けておいた。傀儡である体を成る可く傷付けたくなかったから、ピアスじゃなくて助かった……とだけは言っておこう。
「よく似合っている」
「っ……」
男の低い声が耳朶を打つ。背中をゾクリと駆け上がる、寒気に似た感覚。
“大した術も持たない”と自称しているが……嘘だ。コイツは危険な男だと本能が訴えている。強さは恐らくオレよりも……。
「次は何がいいですか? 指輪とかどうかなぁ」
再び強張った身体を、今度は先程より強い力で抱き締められる。まるで――離さないと、言わんばかりに。