800字チャレンジ
週末の昼下がりの駅前には、いつもより少しだけ浮き足立った雰囲気が漂っている。平日はビジネススーツや制服をまとった人々がせわしなく行き交うこの場所も、今日はどこか空気が柔らかくて、ほんの少し騒がしい。だから、待ち合わせ場所である広場の方から聞こえてくるそれがピアノの音、それも生演奏だと気づくのには少しだけ時間がかかった。どこかで聞いたことがあるような、不思議な懐かしさを感じる旋律が聞こえてくる方へ視線を移すと、駅前の広場に小さな人だかりができていることに気がつく。その中心には、カラフルにペイントされた一台のアップライトピアノがあった。そして。
「……三宙?」
演奏していたのは他でもない本日の待ち合わせ相手、浮石三宙その人だった。
♢♢♢
演奏が終わり、聴衆たちが拍手と共に解散していくのを見計らって声をかけると、三宙はようやくこちらの存在に気づいたらしい。鍵盤から手を離したまま数度瞬きをして、それから少しだけ気まずそうに目を逸らした。
「久しぶりに見た。お前がピアノを弾いてるところ」
「ご自由にどうぞって書いてあったから、一曲くらい弾いてみよっかなって」
「懐かしいな。昔はよく聞かせてくれただろう」
「いつの話してんだよ。恥ずいから忘れろ」
「さっきの曲、どこかで聴いたことがあるような気がしたんだ。三宙の家だろうか」
「あー、そうかもな。お前と一緒にいたときに弾いた記憶ある。つかどんだけ覚えてんだよ。オレのファンなの?」
「ああ。俺は三宙のピアノが好きだ」
「お前なんでこういう時だけやたらと素直なんだよ。調子狂うわ」
広場のストリートピアノにはもう別の人が座っていて、たどたどしいねこ踏んじゃったが聞こえてくる。小学生くらいだろうか。小さな背中に、かつての自分たちの姿が重なった。
「……三宙?」
演奏していたのは他でもない本日の待ち合わせ相手、浮石三宙その人だった。
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演奏が終わり、聴衆たちが拍手と共に解散していくのを見計らって声をかけると、三宙はようやくこちらの存在に気づいたらしい。鍵盤から手を離したまま数度瞬きをして、それから少しだけ気まずそうに目を逸らした。
「久しぶりに見た。お前がピアノを弾いてるところ」
「ご自由にどうぞって書いてあったから、一曲くらい弾いてみよっかなって」
「懐かしいな。昔はよく聞かせてくれただろう」
「いつの話してんだよ。恥ずいから忘れろ」
「さっきの曲、どこかで聴いたことがあるような気がしたんだ。三宙の家だろうか」
「あー、そうかもな。お前と一緒にいたときに弾いた記憶ある。つかどんだけ覚えてんだよ。オレのファンなの?」
「ああ。俺は三宙のピアノが好きだ」
「お前なんでこういう時だけやたらと素直なんだよ。調子狂うわ」
広場のストリートピアノにはもう別の人が座っていて、たどたどしいねこ踏んじゃったが聞こえてくる。小学生くらいだろうか。小さな背中に、かつての自分たちの姿が重なった。