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きみと星のはざま

「怜、さては謀ったな」
「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。放課後付き合ってくれるって言ったのは百冬実さんの方じゃないですか」
「いや、それはそうだが」

学年末考査が目前に迫った、二月中旬の夕暮れ時。怜に連れられるまま向かった先は自習室でも図書館でもなく、無人の調理室だった。困惑を隠せずにいる私をよそに、目の前の彼女はさっきから鼻歌交じりで調理器具を並べ始めている。

「はい、これ百冬実さんの」
「……何だこれは」
「百冬実さんに似合うと思ってつい買っちゃいました」

得意げな笑みを浮かべる怜に手渡されたものをよく見てみると、どうやらそれはエプロンのようだった。なぜか胸元には可愛らしいモルモットのキャラクターが大きくプリントされていて、思わず眉間に皺が寄ってしまう。

「……なぜ突然こんなものを」
「必要だからです。調理と実験は清潔な服装と環境で行わないと」
「調理?」
「今日は百冬実さんにお菓子作りを手伝ってもらおうと思って。わたしだけだと上手くできるか心配なんです」

『絶対失敗しない! チョコレートマカロンの作り方』と表示されたスマホの画面を差し出しながら怜は言った。

「百冬実さん器用だし、こういうのも得意だと思うんですよね」
「菓子作りは専門外だが」
「この前作ってくれたカルメ焼きはすごく美味しかったですよ」
「それとこれとは話が別だろう」
「でも絶対失敗したくないんです。本命の人に食べさせたいものなので」
「本命?」
「あれ? 百冬実さん、もしかして今日がなんの日なのか忘れちゃってます?」
「なんの日、と言われてもな……」

思い出そうとはしてみたものの、本当に心当たりがないので首を横に振るしかない。わざわざ問うてくるということは何らかの記念日ではあるのだろうが。

「聖ウァレンティヌスの命日、バレンタインですよ」
「ああ、もうそんな時期か」
「反応薄っ。とにかくそういうわけなので、完成したら一番に食べてくださいね」
「本命に渡す菓子なのだろう。味見役が私でいいのか?」
「いや、味見というか」
「というか?」
「百冬実さんに受け取ってほしいんですけど……」
「何を」
「わたしの本命チョコです」

そこまで言われてようやく気がつく。
完成したら一番に食べてくださいね、という言葉はどうやら私に向けられたものだったらしい。
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