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きみと星のはざま

「愛してる、ってどういう気持ちなんでしょうか」
「それは長くなる話か?」
「はい!」
「……分かった、一旦聞こう」
「分かったって、なんでそんな嫌そうな顔してるんですか。別にいいですよ、興味のない話を無理に聞かせるほどわたしは酷い奴じゃないので」
「いやいいんだ、話してくれ。時間ならたくさんあるわけだしな」

身体ごと崩壊しようとしていた怜をそのまま反世界へ引き留めて、共に過ごし始めてから一体どれほどの時が流れたのだろう。今となっては確かめる術はもうないが、私たち二人だけのこの空間ではひどく穏やかな時間が流れている。それこそ、世界滅亡までの50日間を過ごしていた頃の忙しなさとは比べようもないくらいに。

「百冬実さんも知ってる人だとは思うんですけど、『殺したいほど愛してる』って言葉の意味をずうっと考えていた志献官がいたんです」
「ああ、塩素の彼か」
「『殺したい』は分かるけど、『愛してる』は分からないって」
「それは……随分とまた物騒な台詞だな」
「でもわたし、今ならなんとなく答えを出せるかもしれなくて」
「ほう」
「わたしね。一一三計画と百冬実さんのことを聞いたとき、正直自業自得だとも思ったんです」
「ああ、私自身もそう思っている」
「でも……可哀想だとも、もどかしいとも、確かに思ったんです。あのときわたしが一緒にいてあげられたら、あなたを繋ぎ止める糸の一本にでもなれたかもしれないのにって。ただの懺悔ですけど」
「……可哀想、か」
「すみません! 失礼でしたよね、忘れてください」
「いいや構わない。続けてくれ」
「……私は媒人として、舎密防衛本部で戦う触媒の志献官として、百冬実さんを倒さなければいけなかった。何としてでも、何に代えても。それはきっと、私があの日あの場所で目覚めた理由になるから」
「そうだな」
「百冬実さんのことが恨めしくて可哀想で、それでも今こうして一緒にいるのは苦じゃなくて、何度もわたしを救ってくれたことがありがたくて……ねえ百冬実さん、この気持ちもいつかは愛になるんでしょうか?」
「それはこれからの私たち次第だろう」
「答えになってません!」

私とのやりとりの中では思うような答えを得られなかったらしく、何やら不服そうな怜の頬が膨らむ。つんと尖った唇がどうしようもなく愛おしくて、そっと口付けた。
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