03 ララァ・スンという少女
夢小説設定
設定ストーリーの都合上名前が複数出てくる為、
前世の名前以外は固定です。
以下、
エステル・ヴェセーラ(〜U.C.0068)
アラヤ・ストロム(U.C.0068〜)
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・・
長いようで短かったインド旅行も今日で最後となった。
私達は午後にここを立つ。
私は荷物をまとめた後、室内に忘れ物が無いことを確認して部屋を出た。
フロントでは既にジェフが荷物を持って立っており、私は受付に鍵を返して彼のもとへ向かう。
「おはようございます、アラヤ様。」
「おはよう。ジェフは早いね。」
「いつも通りでしょう?では行きましょうか。」
ジェフの言葉に頷いて歩き始める。
私は空港へ向かう前に、ララァへ最後の挨拶をするつもりだ。
ジェフとは途中まで一緒に行くものの、別行動することになっている。
途中まで歩き、もはやここでの移動手段の要となったオートリキシャに乗って移動する。
目的地は"あの場所"だ。
「いらっしゃい…って、おや?こりゃ大荷物だね。帰るのかい?」
「そうなんです。最終日に行くならここだと思って来てしまいました。」
インド旅行初日に迷惑をかけてしまったお店に来た。
旅行期間中、お詫びも兼ねて何度も足を運んでいた為、お店の人達とも仲良くなり最終日はここに行こうと決めていた。
「そりゃありがたいね!あぁ!あの子も来てるよ!」
出迎えてくれた店員はニヤニヤと店の中を指して言うと、私の背を軽く押して入店を促した。
勘違いをされている…と思いつつも曖昧に笑って誤魔化す。
「お待たせ、ララァ。」
「……あっ、アラヤ!!」
ぼんやりとした表情で座っていた彼女は、私の呼びかけに何拍かおいて反応した。
イスから勢い良く立ち上がると私の方へよろめきながら駆け寄って来る。
「あっ…!」
私もララァへ近づくと、バランスを崩した彼女の体を抱きしめるような形で受け止めた。
「ララァ、怪我はない?」
ポスンと軽い衝撃を感じ、ララァのつむじが見えた。
「ごめんなさい…!」
ララァが焦ったように私を見上げるので、私は腕の力を緩めて片手でララァの顔にかかった髪を整えてあげる。
「大丈夫そうだね、よかった。」
「えぇ。……ごめんなさい、今日で最後なのに。」
私が笑うのを見たあと、ララァは恥ずかしそうに体を離すと少し寂しそうな笑顔を浮かべた。
「大丈夫。気にしないで。…でも、あっという間だったね。」
ララァを先に座らせ、私も続いて席につく。
「えぇ、本当に。」
やはり寂しそうな様子だ。
…私との時間が楽しかったと思ってくれてるのだろうか。
「…ララァ、渡したいものがあるんだ。」
「…渡したいもの?」
「うん。」
私は鞄の中から封筒を取り出してララァに手渡す。
「何かしら……あっ!」
封筒を開けたララァは驚いた声をあげて中身を取り出した。
「あの日の写真ね…!」
中身は旅行中に撮った集合写真や何気ない瞬間の写真数枚だ。
「大事な思い出だからね。」
目の前のララァがやっと明るい笑顔になったのを見て私も嬉しくなる。
「私、嬉しいわ…!」
「ありがとう。喜んでくれてよかった。」
そうして、店員がタイミング良くチャイを2つテーブルに置いた。
私はそれを一口飲んでから、ララァとの思い出を語り始める。
・・
どれぐらい話しただろう。
軽食としてサモサを食べたりしながら楽しく会話をしていたら搭乗の1時間前になっていた。
「…そろそろ行かないと、かな。」
おもむろにそう告げると、ララァが慌てたように席を立った。
私は店員を呼んで二人分の会計を済ますと立ち上がって店の外に向かう。
「また来てよ、お兄さん!」
「ありがとう、また来ます。」
軽く手を上げて別れを告げると私はララァを引き連れて歩き出した。
「ララァ、私達の旅に付き合ってくれて本当にありがとう。」
ゆっくりとララァに合わせて歩きながら別れの準備を始める。
「ララァの帰りの車は手配しておくから安心して。それから……ん?」
私が話しかけても中々相槌が聞こえず、心配になって立ち止まる。
ララァの方へと体を向けると、彼女も足を止めて俯きながら私の服の袖をそっと掴んだ。
「…ララァ?」
「…また会いに来て。お願い…」
ギュッと服の袖を掴む力が強まり、彼女は悲しそうに顔を歪めてこちらを見つめている。
「うん、もちろん。」
私は安心させるように袖を掴むララァの手をそっと握った。
「…」
次の瞬間、ララァの顔が急に間近に見えて、私は硬直してしまう。
「っ…!?」
青みがかった長い睫毛が視界に映り、唇の端に柔らかい感触が残る。
しかし、それは一瞬の事で、気づいたときにはララァの顔が離れて私の胸元に顔を埋めている状態だった。
「ら、ララァ…?」
チラチラと周囲を歩く人の視線を感じつつも、混乱する頭でとりあえずララァの肩に手を置いた。
「…」
何と声を掛ければいいのか。
彼女がもし、私に恋情を抱いてしまったら…
シャアと出会わなくなってしまったら…
その言葉がふと頭を過ぎると、 途端に不安になってしまう。
…彼女には私が女である事を告げるべきか。
"これ以上"があってはいけない。
私はララァの耳元にそっと顔を寄せると、そっと囁くように声を発する。
「ララァ、私は…」
「わかっているわ……気づいていたの。」
私が告げるよりも先にララァが答えた。
「誰にも言わないわ。だって貴方が私にしてくれた事は全部心からの事だもの。嫌いにもならないわ。」
そう言ったララァは顔を上げて真っ直ぐにこちらを見ていた。
綺麗なエメラルドの瞳に見つめられ、私はやっと思い出す。
「…ありがとう。」
前世の私がテレビで観ていたらララァは、器の小さい人間なんかでは無い。
「アラヤは、大事な"友達"よ。」
ララァの言葉を聞いて安心した私は、彼女の肩においていた手を背に回し抱きしめた。
「うん、友達だ。絶対にまた会いに来るから。」
人々の視線なんてもう気にならず、少しの間私達は抱き合っていた。
ララァはシャアと出会う"運命"だ。だから大丈夫。
…それまでは、私がララァの世界を少しでも明るくしてあげたい。
・・
こうして私のインド旅行は終了した。