03 ララァ・スンという少女
夢小説設定
設定ストーリーの都合上名前が複数出てくる為、
前世の名前以外は固定です。
以下、
エステル・ヴェセーラ(〜U.C.0068)
アラヤ・ストロム(U.C.0068〜)
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・・
あれから数十分ほど歩いて野次馬の波から脱出した私達は、オススメされたレストランとは別の店を見つけて入店した。
近くにいた店員に話しかけ適当に注文を済ます。
「アラヤ様っ、貴方という人は毎回私を殺す気ですか…!!心臓が止まるかと…!!」
「ごめんごめん。」
「……」
そして席に着いた途端、これだ。私はジェフから説教を食らった。
その光景を前に、ララァは困った顔で両者の顔を交互に見つめている。
「…ごめんなさい、私のせいです…」
シュンとした表情で謝る姿を見て私は即座に"貴女のせいじゃ無い"と否定する。
「いえ、私が勝手にした事ですから。謝らないで。」
「そうです!アラヤ様はいつもこんな感じで…!」
ジェフも否定するが、彼がまた説教じみた言葉を垂れ流し始めたので口を手で抑えた。
「むががっ……!!」
「彼のことは気にしないで。…それより、勝手にここまで連れてきてしまってすみません。」
ジェフの口を抑えたまま、彼女に申し訳なさそうに謝罪する。
「いえっ、そんな!私は助けてもらったので…」
彼女は両手をブンブン振りながらそう言ってくれる。本当に良い子だ。
「ありがとう。…そうだ、名乗ってませんでしたね。アラヤ・ストロムと申します。アラヤと呼んでください。」
「アラヤ、様。…私は、ララァ・スンです。」
これで確定した。
やはり彼女はララァ・スンだ。
「ララァ…良い名前ですね。ちなみに、この小言の多い人はジェフ・ライトといいます。」
そう言ってやっと手を離すと、不満顔でジェフが"よろしくお願いします"と言った。
話をしている間に料理ができたのか、ニコニコした店員が料理をテーブルに置いていく。
ビリヤニがテーブルに到着する。
スマホがあれば撮影していただろう、美味しそうな見た目。スパイスの香りに空腹が加速した。
「貴女も食べてください。」
目の前の料理をじっと見つめているララァの姿を見て食べるように促すと、首を左右に振って手を付けようとしない。
「い、いえっ、助けてもらったのに料理までいただけませんっ…!」
くぅ〜…
「あっ、その、大丈夫ですからっ!」
体は正直らしく、彼女のお腹は可愛らしい音を立てた。
私はその姿を見て思わず微笑んでしまう。
「大丈夫だから、料理が冷める前に食べて?」
「そうですよ、気にせず食べてください。」
ジェフもまた微笑んでそう言うと、やっと、チラチラと私達を見つつもおずおずと料理に手を伸ばした。
「……美味しい…!」
目を見開いて料理に感動している姿は年相応だ。
私はジェフと目を見合わせて笑った。そしてララァに続くように食事を開始する。
「…そういえば。ララァさん、なぜあの場所に一人で?」
「あ、その…一緒に来ていた人が、用があるから待っていろ、と。なので、待っていたらさっきの二人に追いかけられて…」
まだ幼い少女を狙ったとは…気持ち悪い。
「…それは、嫌でしたね。無事でよかった。」
そう言いながら、ハンカチを取り出しララァの口元を拭いてあげる。
「む…!?」
ララァが驚いた顔でこちらを見ている。
「あ、ごめんなさい。」
前世で友達の子どもとよく遊んでいた為、口元の汚れを見るとついつい拭いてしまう。
「アラヤ様、そういう所ですよ。」
ジト目でジェフが指摘するので、もう一度ララァに謝る。
「本当にごめんなさい…」
「いえっ、大丈夫ですっ。」
頬を染めてあわあわと戸惑っている姿が可愛くてクスクスと笑ってしまう。
「アラヤ様…」
ジェフはまたしてもジトーっとこちらを見てくるし、ララァは頬に手を当ててキョロキョロと視線を彷徨わせている。
「ハハハッ、ジェフも拭いてあげようか?」
「結構です!」
ジェフに冗談を言えば真剣に拒否してくる。
…とても楽しい時間だ。
しかし、私達が楽しそうにしている中、突如外が騒がしくなった。
「クソっ!!!どこへ行ったんだ!!!」
男の怒声が響き渡り、辺りが騒然とする。
私は何事かと、騒がしい外へと視線を移した。
外では中年の男が顔を真っ赤にして誰かを探している。
…ララァを探している。
直感でそう感じた。
ララァを振り返ると、少し怯えたような表情で固まっている。
私が再び男の方を見た時だった。
…男は目を見開き、ララァを発見した。
「…ララァ!!!お前は何をやってんだ!!!」
ズカズカと音を立てて男は店に入ると、怒りを抑えられない様子でララァの肩を掴んだ。
「ご、ごめんなさい…!」
男を前に、ララァは怯えている。
「この私を困らせて、こんな男達と遊んでいたのか!!!」
店員が困ったようにこちらに来て男を宥めるが、聞く耳を持たず怒りのままに突き飛ばした。
ガシャァン!
店員が背中からぶつかった為、テーブルが倒れてしまう。
…いい年した大人が怒りで喚き散らすとは。
しかし、このままではララァにまで暴力が及んでしまう。
ジェフが焦ったようにこちらを見るが、私は手でジェフにストップをかける。
「彼女は悪くありませんよ。男に襲われているところを助けて、私がここまで連れてきたんです。」
男の肩に手を置いて、後ろから冷静に伝える。
「あ?助けた、だと?ふざけるな!!!そうやってこの後手を出そうとしてたんだろ?!」
バシンッ
振り向きざまに男は肩に置いた私の手を弾いた。
男はさらに、乱暴にララァの腕を握ると、空いた手で私の胸ぐらを掴んで睨みはじめた。
「きゃっ…!!」
「だいたいなぁ、怪しいんだよアンタらは!何者か知らんが、うちの娘に手を出そうなんて……あ"がっ!?」
イライラとして無防備になっている姿を見て、私は男の首を片手で絞めた。
「ララァを離しなさい。冷静に話もできないんですか?」
顔を近づけて静かに囁くと、さらに手に力を込めた。
「がっ…う"、あ"……わ"……わ"がっ、"だ…」
男が苦しそうに呻く。
そして、すぐに首を縦に振ってララァから手を離した。
それに合わせて私も男の首から手を離す。
「っ、ゲホッ!ゴホッ!っクソ!!!」
ふと、この男の思考がスッと頭に入り込む。
""こいつ、殺してやる!!""
一瞬のうちに男がこの後ナイフで攻撃することがわかった。
私は先手を打って、男の手を掴んで微笑む。
「武器はダメですよ。殺そうだなんて、怖いですね。」
「ひっ…!!」
「"バケモノ"、ですか?」
しっかりと目を合わせて言えば、男は顔を真っ青にして腰を抜かした。
「怖がらないでください。私達はただの観光客なんですから。さて、今度こそ冷静にお話しましょう。」
私は、男の前で屈む。
さて、どうしようか。
「な、何なんだアンタら……」
男は、私が屈んだことでさらに怖くなったのか後ずさる。
「名前はアラヤ・ストロムです。で、後ろの彼はジェフ・ライト。休暇中の観光客です。」
ニコッと笑いながら続ける。
「休暇を1ヶ月程頂きまして。今日観光をはじめたばかりなんです。ただ、1ヶ月も滞在するとなると、土地勘が無い私達ではとても不安で…。そこでなんですが、今日会ったのも何かの縁ということで、ララァさんをお借りしてもよろしいでしょうか?」
「「…はぁ?!」」
男とジェフが突拍子の無い私の発言に驚いている。
ララァも同様に目を見開いて動揺していた。
「"友人"として旅のガイドをして頂きたいんです。もちろん、心配だと思いますし、その日のうちにララァさんを帰宅させます。」
「いや、しかし…」
私は渋る男に続けて話をする。
「期間は私が旅行を終える日まで。報酬もしっかりとお支払いします。どうでしょう?」
ララァが、カバスの館で生活している今、せめて私といる時だけでも楽しく過ごして欲しい。
今回は一月だけしかないが、ここで繋がりを作って継続的に支援をしていきたい。
その後はきっとキャスバル…いや、シャア・アズナブルが迎えに来るだろうから、それまでは。
「ジェフ、鞄から私のネックレスを出してほしい。」
「え?まさか…!」
「いいから早く。」
なんとなく持っていこうと思ったネックレスに使い道があったとは。
カヴァデールからいくつか貰ったアクセサリーのうちの一つ、純金のネックレスをジェフから受け取る。
「前金としてこちらを差し上げます。」
男の手を取ってネックレスを渡すと、そこそこ重みがあるそれを受け取った男は、目を輝かせた。
…この男はきっとカバスの館の主人だろう。
しかし、今はまだ戦争も始まっておらず娼館の需要としては低い。だからか、この男からはそういった人間の余裕が感じられない。
「悪い話ではないでしょう?」
「…は、ははっ、喜んでお受け致します!!…ララァ、そういう事だ!くれぐれも粗相の無いように!」
「え…?」
さっきの態度はどこへ行ったのやら、男は笑顔でこちらの提案を承諾した。
さっと立ち上がった男はララァを渡私の前へ押し出して肩に手を置いた。
「今日は色々とすみません。…明日からお願いしますね、ララァさん。」
「…は、はいっ。」
ララァはまだ少し驚いているが、しっかりと返事をしてくれる。
「では、集合場所を決めましょう。」
ララァに微笑んだ後、私は男へと視線を向けて話を進めた。
しかし、男はカバスの館についてはまだ明かさないらしく、私達のホテルからそこまで離れていない店に集合する事になった。
いずれわかるだろうから今は良いだろう。