02 仕事を休んで旅をせよ
夢小説設定
設定ストーリーの都合上名前が複数出てくる為、
前世の名前以外は固定です。
以下、
エステル・ヴェセーラ(〜U.C.0068)
アラヤ・ストロム(U.C.0068〜)
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・・
「その荷物はこちらに!ああ!それはこっちです!!」
ジェフが慌ただしく荷物の置き場を指示している。
「やっぱり地球だよね。」
ゆっくりと深呼吸をする。
人工的ではない、自然の空気。
この重力感も、風も、陽の光も、青空も。
この感覚はエステルでは無く、"私"が覚えているものだ。
「アラヤ様も手伝ってください!!」
「はいはい。」
バタバタと動き回るジェフの元へ向かう。
私達は、地球へ来た。
---1ヶ月前、連邦関係者と契約した。
どうやら私の事を噂で聞いていたらしい。今で言う口コミだ。
システムや食料問題についての協力を求められた。
「地球に来られた。しかもそれなりの額も貰えるし、丁度いい。」
小さな声で呟く。
…好条件故に、裏はあるだろうけど。
連邦の基地からそこまで離れていない場所に私の生活する家が用意された。
連邦の基地内よりはマシだが、監視の目はあるようで
、世話係がいる。
そこそこ長い契約になる。
私は私自身の価値を高め、資金も集めるつもりだ。
その為にも、自由に行動できるように信頼も築いて行かなければ。
忙しくなりそうだ。
私は眩しい太陽を1人眺めた。
・・
「アラヤさん、新システムが好調です。生産効率が2.7倍に上昇してますし、このまま全員が扱い慣れればさらに上がるでしょう。」
地球で仕事を始めて半年が経った。
最初はギクシャクとした感じだったのが、共に仕事をする研究員やエンジニア達が嬉しそうに結果を共有してくれる。
「良かったです。安定した供給ができるようにもう少し改良が必要ですが、ひとまずは安心ですね。」
地球はコロニーに比べれば圧倒的に資源が潤沢だ。
しかし、この世界でも戦争を重ねた末に環境汚染や異常気象が深刻化している。
富裕層は困る事なんて無い。けれど、その下にいる一般的市民達は食べていく事が難しい。
「豪雨による水害や、気温上昇による干ばつ…この両極端な条件での安定化はまだ難しいですが、少しは希望が見えてきた気がします。」
そう語る彼は、故郷が酷い干ばつに悩まされてるらしく、それを変えたくて研究に参加しているらしい。
「そうですね。引き続き頑張りましょう。」
私が若いからと馬鹿にするわけでもなく、初めから純粋に問題を解決したいと協力してくれる彼らを助けたい。
その為にも成果を出さなければ。
「ええ。でも、ここへ来てからずっと休まず我々に協力してくれたでしょう?一度しっかりと休んで。上には自分が伝えておきます。」
私が次の計画を立てようと紙に手を伸ばしたところで止められた。
ここにいる人間の誰もが疲れているはず。
「いえ、私は大丈夫ですよ?」
「ダメです、休んでください。しばらくは記録がメインになるんですから大丈夫です。」
子どもである私を心配しているのか、一歩も譲る気配がない。
「………わかりました。ありがとうございます。」
圧に負けてしまった。
「地球は初めてでしょう?良いところが沢山あるんです。楽しんで。」
休みか…
研究を進めなきゃと思う反面、内心ではワクワクしていた。
私は、この体で初めて地球を見て回る。
気にならないわけがない。
地球か…前世ではあまり旅行に行かなかったし、どこへ行こうか。
「…貴方の出身地を聞いても?」
「え、私ですか?インドです。」
「インド、ですか。ありがとうございます。」
「い、いえ…?」
インドか…インド。いいかもしれない。
不思議そうな顔する彼に、目的地が決まったと笑顔で告げて私は部屋を出た。
ガンダムの世界といえば、インドは外せない。
私は足早にジェフの所へ向かった。
・・
「………で、インドですか。」
「そうだよ。」
ジェフと向かい合ってチャイを飲む。
ガヤガヤと人々が行き交う中、私達はインド出身の研究員からオススメされたチャイ専門店にいる。
「まあ、見てみたいのは確かだし。…何より、これだけ人が多ければ監視もし辛いでしょう。」
ジェフに届く程度の小声で話す。
ジェフも店内をちらっと横目で見て頷いた。
研究員達のお陰で1ヶ月ほど休みを貰えた私達は旅行兼、地球の現状把握に来たのだ。
了承がもらえたとして、監視が無くなるわけではない。既に店内に客のフリをした男が1人いる。
「強引に連れてきてしまったけど、ジェフは行きたい場所はない?」
「行きたい場所、ですか…うーん、有名な寺院は見てみたいですね。」
とりあえず、ノープランの旅をゆっくり始めることにした。
お互いの行きたい場所に行く。いいかもしれない。
「なら行こう。」
・・
人で溢れているものの、私達はスーツ姿の為とても目立つ。
途中で現地のクルタ・パジャマに着替えて旅を開始した。
「着替えるまでは結構目立ちましたね。……まあ、アラヤ様の場合は着替えても目立ちますが。」
「あはは。」
チラチラと現地の女性から控えめに視線が送られる。
前世では経験することも無かった為、慣れない。
とりあえず、適当な店に入りサングラスを購入した。
先程よりはいいかもしれない。
「じゃあ、気を取り直して行こう。」
・・
「いや、凄かった…」
私達はオートリキシャ(タイで言うトゥクトゥク)に乗って移動することにした。
気温が高いため、汗が止まらない。
だからか、オートリキシャでの移動がとても心地よかった。
「タージマハル、遠目から見ても感動するというか…コロニーでの生活が普通だったので、ああいった建造物が見られて嬉しいですね。」
ジェフが嬉しそうに話す。
コロニー以外の景色を、私は知っていた。けれど、エステルやジェフ(トーマス)は知らない。
とはいえ私自身、前世でインド旅行は未経験だった為とても良い経験になった。
ファーストかオリジンか、どちらの世界にしても、いずれはこうやって普通に見ることも叶わなくなる筈だ。
「この後はどうする?とりあえずどこかレストランにでも行こうか。」
「…ですね。」
1日目にして暑さと人の波で疲労が襲ってくる。
ジェフもそうらしく、顔には疲労の色が滲んでいた。
オートリキシャの運転手にオススメを聞いて店を探す。
ジェフを先頭に、私も後ろでキョロキョロと店を探す。
「ありました!」
数十分ほど歩き回った後、ジェフが1軒の店を指差し私に呼びかけた。
「さすがジェフ。」
彼の方へ歩き出す。…その時、
「…やめてくださいっ!」
抵抗するような女性の声が聞こえた。
「離して!誰か…!」
続けて聞こえた声に辺りを見回すと、店から少し離れた路地で、誰かが男二人に囲まれていた。
男の背中が邪魔で顔は見えないが、背が低い為まだ少女と思われる。
「はっ、無駄だ。誰も来ちゃくれねぇよ!」
ニヤニヤと男が少女に顔を近づけて言った。
少女一人になんて事を。
「ジェフ、先に入ってて。」
「え?何ですか?」
そう告げて、私は足早に男達の方へ向かう。
そのまま一人の男の肩を掴んで話しかけた。
「何やってるんですか?」
「あ"ぁ"?」
私に肩を掴まれた男は、イライラした様子でこちらを振り返る。
「何だぁ、お前は?」
もう一人の男もこちらを見る。
「彼女、嫌がってますよね。こんなに嫌がられるって…相当無理って事じゃないですか。」
「…何だと?」
男が怒りで震え始めた。
「聞こえなかったんですか?なら、もう一度言いますよ。」
「こんのっ、クソ野郎が!!!調子に乗りやがって!!!」
男は少女から完全に手を離し、私の方へ向いて手をこちらに伸ばす。
バシッ!
「なっ…!」
私は、胸ぐらを掴もうとした男の手を弾き、少女へ手を伸ばした。
「え…?」
驚く少女の手を掴んで勢いのまま引っ張ると、自分の背に隠した。
「テメェっ!!許さねぇ!!!」
「危ないっ!」
男が全力で振りかぶりこちらに殴りかかってくる。
「う"ぐぉっ!?」
それよりも早く私は男の腹に拳を全力で叩きつけた。
「…!? 何しやがる!!」
その様子を見たもう一人の男も飛び掛かってくる。
「う"ぇ"っ!!!」
私は男の鳩尾に前蹴りをお見舞いした。
「ご、ごい"づ……」
周りの人達が何だ何だとこちらを見ている。
…少しやり過ぎたかもしれない。
お腹を押さえたままゆっくり立ち上がろうとしている男達の所へ行き、しゃがみこんだ。
「…! …な、なんだよ!」
「ここでやめましょう。周りも見てますし。」
「ふっざけんなっ!」
私の一言でまた怒りが湧いたのか、胸ぐらを掴んで男が顔を寄せてくる。
私は片手で男の腕を掴みながらもう片方の手でサングラスを目元からずらした。
鋭い目付きで"まあ、落ち着いて"と静かに言った後、続ける。
「…私、今連邦で仕事してるんです。仲良くしましょう?」
「…っ!」
ついでに男の腕を掴んだ手に力を込めると、男の手の力が緩んだ。
それを確認して私は立ち上がる。
地面でへたり込む男二人を置いて後ろで待たせている少女の方を向いた。
「お待たせしてすみません。お怪我は?」
「いえ、大丈夫です。その…ありがとうございます。……あの、大丈夫ですか?」
「………!!」
………どうしよう。
男二人とのやり取りに集中し過ぎて、少女の姿をしっかりと見ていなかった。
褐色の肌、額にはビンディ。両サイドをお団子のようにまとめた髪型はまさに___
「…あの…?」
「…あ!いや、はは、ごめんなさい。少し、知り合いに似ていて。…怪我がなくてよかったです。」
咄嗟に誤魔化したが危なかった。
危うく、彼女の名前…ララァと呼んでしまうところだった。
「そう、ですか。」
「…えーっと、よろしければ場所を移しませんか?人の視線が凄いので。」
気がつけば私達の周辺には人だかりができており、好奇の目が向けられている。
「え、えぇ。」
「怪しい事とかするつもりも無いんで、って証明するのも難しいですけど…レストランとか、とりあえずここから移動しましょう。失礼、手をお借りしますね。…ジェフ!ごめん、移動しよう!!」
彼女の手をそっと握り、離れたところであわあわとしているジェフに声をかけて人混みを掻き分ける。
後ろで少し困った顔で着いてくるララァをどうしようか考えながら、私は逃げるように移動した。