01 生存戦略
夢小説設定
設定ストーリーの都合上名前が複数出てくる為、
前世の名前以外は固定です。
以下、
エステル・ヴェセーラ(〜U.C.0068)
アラヤ・ストロム(U.C.0068〜)
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その後も話し合いを続けていた私達だが、突然の連絡があり、交渉は明日に延期となった。
相手方もこちらの扱いについて検討しているのだろう。
こちらとしてはさらに準備ができる為、ありがたい。
・・
「…という、コロニー内でも課題となる資源の消費を抑え栽培が可能となる植物となります。」
「ほほぅ…これは素晴らしい…」
トーマスとの話し合いと追加の事前準備を行っていたらあっという間に次の日を迎えた。
私達はサイド6の8バンチ『パルダ』にいる。ここは大統領官邸がある政治の中枢機関で、まだまだ不安定なサイド6の中で一番安定している場所。
政治や軍事関係者がいる富裕層のエリアというわけだ。
そんなエリア内に建ち並ぶ立派なビルの中の1つ、一般的なものに比べ豪華な造りの応接室で行われる会話。
プレゼンに関して、反応は非常に良い。
しかし、口角を上げて頷く姿を見て考えている事がわかった。
今回の交渉相手はコロニーの開発に関わる政府関係者だった。名前はカヴァデール。
サイド6のさらなる発展と、地球連邦とジオン両者への中立な立場の維持を考えて私達利用するつもりといったところだ。
「これらはサイド6の発展に大きく影響するでしょう。…しかし、我々も懸念している事がありましてね…」
カヴァデールは室内に設置されたディスプレイの電源を入れると、こちらを見てわざとらしくニヤついて言った。
「今、ジオン公国はこの様な状況ですからね。我々としてもすぐにこの件に応じたいところですが…継続していけるのかもわからないですし…」
ディスプレイに映っているのは現在のジオンの様子だった。ヴェセーラ家にも暴動やテロが迫りつつある。
「…心配されるのもわかります。ですがそちらは問題ありません。私も開発に携わっておりますので、継続的にサポートさせて頂きます。」
「いやいや、ご冗談を!」
「信じがたいとは思いますが事実です。ただ、お見せするにしても、ヴェセーラ家として表立って活動するのは難しいでしょう。ですので一つお願いがございます。…こちらで、私とトーマスの新しい身分を用意して頂きたいのです。」
普通、10歳の子どもがこんなこんな事を言えるわけがない。
しかし、エステルの早熟した脳と、それに合わさった30数年生きた私の精神や経験が合わさり今がある。
気味悪がられたとしても、今は生きることの方が大事だ。
「…私を馬鹿にしているのか?」
口調が変わり、不快さを隠そうともしない。
「今のヴェセーラ家の状況をわかっていて私がそんな事をしなければならない理由があるとでも?ザビ家を敵に回してまでアンタらを助けるより、ザビ家に引き渡した方が良いに決まってるだろう!…無償でこちらに技術と権利を渡せば見逃す、だから…」
これは面白い程思ってた通りの考えだ。
やはり事前準備をしておいて正解だった。
「エステル様に対して何て言葉を…!!」
トーマスが怒る様子を横目に、私は大袈裟な程大きなため息を吐く。
「はぁー…そうですか。サイド6もまた大変ですものね。連邦とジオンの両者の顔を伺わなければなりませんし、余裕がありませんか。」
挑発する様に上目遣いでニヤついきながら相手を見た。
「〜っ、このっ…!」
「今すぐジオンに突き出してやる、ですか?良いですよ。ただし、できればの話ですが。…私、知ってるんですよ?」
「はっ、焦って脅そうとでもしているのか?」
私の一言を嘘だと思っているのかイライラしつつも表情は馬鹿にしたように笑っている。
「そうですね…そうかもしれません。あ、私とても良い写真を持っているんです。見ますか?」
私は一切気にすることなく、鞄から1枚の写真を取り出した。
「綺麗な方ですね。隣にいらっしゃるのは貴方では?」
「…な…!!い、いや、違う。こんなものは知らん!」
先程の勢いはどうしたのやら、途端にわかりやすく焦り始めた。
「彼女、地球から来たらしいですね。生活が厳しく、こちらに来てから貴方に支援してもらっているとか。」
「…だから何だと言うんだ。よくある事だろう、こんな事は。」
必死で堪える姿が滑稽だ。結局自ら答えを明かしてしまっている。
「まあ、彼女の話は良いでしょう。問題は、貴方がやっている事です。お酒が入るとよく喋るそうで。政府と関わる人間と言うのに、機密情報に関して甘いんですね。」
私は話を続けながら、鞄から数枚の用紙を取り出し、さらにその上へ数枚の写真を広げるように置いた。
「話した内容はこちらでしょう?ジオンとのやり取りや、受け取った金塊(賄賂)、取引先の情報も……ハニートラップに弱すぎるのでは?」
カヴァデールが誇らしげに用紙を持って話している様子や、女性に金や宝石を持たせている姿など、酒が回りすぎて写真を撮られていることにも気付いていない。
「こ、これは…その、」
冷や汗を流し、口をパクパクとさせ言い訳を考えている。
この後はこれらを破り捨てて銃でも取り出すだろう。
「…っ!くそっ!」
グシャッ、ビリビリッ
予想通り。私の出した紙達は無惨な姿に変わった。
「銃を取り出して撃ってもどうにもなりませんよ?紙だけに残しているわけではありませんし、データもちょっとした細工をしていますから。」
「どういうことだ、」
トーマスが私を庇うように立つ。カヴァデールが拳銃を手にしているからだ。
私はトーマスの背から顔を出し、続ける。
「一定時間の操作が無いとデータがサイド6全域に送信されるんです。システムの解除方法は私が知っています。」
「…今すぐデータを削除しろ!この男を撃つぞ!!」
銃口は私からトーマスへと方向を変えた。
しかし、これも無意味だ。
「トーマスは、私のものとは別のデータを持っていますよ。解除方法もトーマスに考えて貰っているので私は知りません。まさか、女性…しかも地球連邦軍所属の女性に機密情報を漏らしていたなんて…いったいどんな処罰を受けることになるのやら…」
「ぐっ……」
彼の銃を持つ手が震え始めた。
そろそろ頃合いだ。
「さて、答えを頂けますか?そろそろ1回目の解除の時間なんです。」
「…」
彼は黙って震えたまま。プライドとの勝負といったところか。
「…わ、わかった。応じよう…」
数秒の葛藤の後、諦めたようだ。
「賢明な判断に感謝致します。では、詳しい内容をお話しましょう。」
男が銃を下ろし、懐へと仕舞った。
トーマスはほっと胸を撫で下ろすと、元の位置へと戻る。
・・
契約書も作成し、しっかりと内容に目を通す。
「ありがとうございます。このような形になってしまい申し訳ないです。…ですが、約束はしっかりと守りますので安心して下さい。」
男は悔しそうな顔で忌々しげに質問を投げかけた。
「…あんた、何者だ?10歳かそこらだろ、どう考えたって言動も何もかもガキじゃない。」
私はニッコリと笑いかける。
「ヴェセーラ家ですから。」
男はそれを聞くと、黙った。そして、"エスパーか?"、男がそう心の中で呟いたのが伝わる。
「エスパーかもしれないですね。」
笑顔で答えれば、男が途端に焦りだすので笑ってしまった。
「…あ、そういえば一つ忠告を。」
部屋を出ていく前に、私は思い出した内容を男に伝える。
「あの女性にはもう会わない方がいいですよ。命が惜しければ、尚更。」
「…っ…」
男が何も言わないのを見て、私は会釈をして部屋を後にした。
…まったく、どこまで惚れてるんだ。
呆れつつ、トーマスをランチへ誘う。ついでにこの後のことも話そう。