01 生存戦略
夢小説設定
設定ストーリーの都合上名前が複数出てくる為、
前世の名前以外は固定です。
以下、
エステル・ヴェセーラ(〜U.C.0068)
アラヤ・ストロム(U.C.0068〜)
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"エステルではない"
私には藤本咲紀という名前があった。
日本という国で普通に生まれ、普通に生活し、そして運悪く事故に巻き込まれた人間。
私のいた世界ではエステルの世界は機動戦士ガンダムというアニメだったし、ロボ好きの父の影響で小さい頃から何度もアニメを見ていた。
最後の記憶が事故の場面。全身の力が抜け、体から熱が奪われる感覚からきっと私は死んだのだと思う。
では、本物のエステルに何が起きたのか。
世話をしていた侍女によると、エステルは、ある日突然うわ言のように、"助けて"、"こんなのはもう嫌だ"と呟き高熱で倒れたという。
回復は見込めず、最後は持病の発作によって心肺停止。
しかし、心肺停止から数秒後、突如部屋に白い光が差し込み、何故かはわからないが心臓が再び動き始めたらしい。
私の魂が入った証拠だろう。
…同時に、彼女の魂は多分、もうこの体に存在しない。
共存していたらきっと何かを感じるであろう、その"何か"も感じない。
U.C.0062 私は4歳のエステル・ヴェセーラになった。
記憶の中のエステルは、とても賢い少女で、この年齢にして文字も読め、知識の習得も圧倒的に高い。
きっと、彼女はギフテッドなのかもしれない。
…しかし、その才能とは裏腹に体が弱く、部屋で1日中本を読んで過ごすことが多かった。その卓越した頭脳では同年代の子との関係構築もとても難しく、一部の人間から気味悪く思われていた為友達もいない。
この子から読み取る記憶の多くは孤独で悲しいものだったと思う。
だからなのか、この子は人生を諦めてしまった。
…でも、この子は知らない。目が覚めたとき、涙を流して喜んでくれる人がいた事を。
愛してくれる人がいた事も。
まだ少しこの体に慣れていない事もあるけれど、でも、私はエステルを生かしてあげたい。
もしかすると、私の知らないエステルの"何か"があるのかもしれない…でも、彼女のこれからは、まだ、あるはず。
咲紀という人間の人生は終わってしまったけれど、私は、愛も絆も知っている。
エステル。私がいる。私があなたに未来を見せてあげる。真っ白なままは難しいかもしれない。…それでも。
そうして私はエステルの為に、エステルが諦めてきた事を少しずつ取り戻す日々を過ごした。
そうして、ダイクンの亡くなった現在に至る。
用意されたホテルへ到着するなり、すぐにソファへ腰掛けトーマスと向き合った。
「…では、これからについて話しましょう。」
豪華な装飾が施された室内にはトーマスと私の二人しかいない。
「は、はいっ」
子どもらしからぬ様子はいつも事だが、ただならぬ雰囲気を感じ取ったのか、彼は背筋を伸ばして緊張している。
「…ふっ…緊張しなくて大丈夫です。」
「はい…」
ほっと胸を撫で下ろし、目の前に置かれる紅茶に手を伸ばす姿を見て続けた。
「この後父と母はジオンできっと亡くなるでしょう。」
「ンブォッ!?…ゴホッ、ゴホッ!!」
トーマスは目の前で盛大に紅茶を噴き出し、むせた。
「大丈夫ですか?」
そっとハンカチを差し出すと、首を左右に振りながら手の平をこちらへ向けて大丈夫の意思表示をされる。
「っエステル様、そんな縁起の悪いことをおっしゃらないでください…!」
トーマスは青ざめた顔で詰め寄る。
「…そんな事が起きてほしくないのはわかります。ですが、ジオン・ズム・ダイクンが亡くなった今、この後に起こることは予想がつくでしょう?」
「…」
オリジンの世界にしろ、ファーストの世界にしろ、ダイクン家とザビ家の対立は激化する。残されたキャスバル達の事もあるし、ラル家は既に動いているだろう。
「両家が動かなくとも、各派閥が黙っていない。既に双方でテロも起きていますし、ヴェセーラ家が巻き込まれるのもそう遅くはないでしょう。…だからこそ、私達はこれからについて話さなければならないのです。」
目の前ではトーマスが悔しさを隠しきれない様子でテーブルに拳を置いている。
彼の手にそって私の手を重ね、ゆっくりと言葉を続ける。
「家から連れてきた使用人が数人いますが、今の私が背中を預けられるのはトーマス、貴方しかいません。」
「エステル様…」
「もし残してきた方がいれば…何とかします。だから、」
「…恥ずかしながら、私は独り身でして。…ですので、エステル様をお一人にはしませんよ。私を拾ってくださったトーレス様に恩を仇で返すわけにはいきませんから。」
先程までの表情と違って、どこか決意が固まったような表情だ。
「…ありがとう。貴方への恩は、必ず。」
それから私達は現状の再確認と、この後の交渉について話し合った。
「…今回の件について話し合いが終わったあと、私達の今後の身分について交渉します。私とトーマスは行方不明、もしくは死んだ事にしましょう。」
「新しい身分を作る、ですか…しかし、そう上手く行くでしょうか?ダイクン派が混乱している今、ヴェセーラ家との交渉は向こうには好都合。逆にこちらが利用されてしまいますし…」
この先ヴェセーラ家が無くなったとして、相手がこちらとの取引を継続する可能性は低い。
そう"通常ならば"
「そこは問題ないでしょう。消して弱くは無いことを証明すれば良いのですから。」
そう。この世界において、事前準備は必要不可欠。
「……何をなさるおつもりで?」
私は質問に対してニッコリと笑顔で答える。
「ただの交渉ですよ。」