04 偽物と偽物
夢小説設定
設定ストーリーの都合上名前が複数出てくる為、
前世の名前以外は固定です。
以下、
エステル・ヴェセーラ(〜U.C.0068)
アラヤ・ストロム(U.C.0068〜)
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U.C.0075
地球での生活で2年が過ぎた。
連邦所属の研究員との共同研究は目覚ましい成果を遂げた。
この2年で生産力は確実に上がり、日々改良を行いながら食料生産は安定し始めている。
今後の課題は、それを地球全土にどう普及していくのかというぐらい。
私達のいる地域は活気が戻りつつあった。
私はとても忙しい日々を過ごしていたが、その甲斐あってサイド6との行き来を許可される異例の存在にまで成り上がれたのだ。
仕事の合間を縫って、ララァとも交流を続けている。
地球での人脈も確実増え、密かに私は力を蓄えていった。
これで、やっと安定する。
私は確信した。
…はずだった。
・・
「今、何と…?」
「ははっ、その…ジオンの士官学校に行って校内設備のシステム改修を行っていただきたく…」
久々にサイド6に戻り、私が不在の間を任せているカヴァデールに会って早々の事だった。
進捗を聞こうにも、そわそわとした様子の彼を不審に思い、問い詰めたらとんでもない爆弾を落とされたのだ。
「…連邦側主導って所でしょうが、ジオンも噛んでいるだろうし…厄介な事を。」
眉間を押さえて考える。
カヴァデールが承諾してしまった以上、ジオンへ向かわなければならないのは確定だ。
しかし、故郷であるが故にジオンはとても危険だ。
万が一素性がバレるような事があれば、私は最悪殺されてしまうだろう。
「なんでも、今技術者が不足しているらしく、改修を行う人材が必要なんだと。…士官学校は連邦が指揮しているので、アラヤ様の事は耳に入っていると思われます。」
カヴァデールの言葉は本当だろう。
兵器開発に夢中になりすぎて猫の手も借りたいといったところか。
「どうなるにせよ、行かなければならない事に変わりはないでしょうし…条件をつけた上での協力としましょう。後でこちらからコンタクトを取ります。」
そうして一旦話に区切りをつけると、私はカヴァデールから近況を話し合う。
厄介事を増やされた身としては腹立たしい限りだが、文句だけ言ってるわけにもいかない。
保険に保険を重ねて用心しなければ。
ジェフとも連携を取りつつ行おう。
・・
「…アラヤ様ですね。お連れの方共々、荷物はお預かり致します。」
「ありがとうございます。」
ついに来てしまった。
懐かしく、忌まわしいジオンに。
ジオンに到着すると、すでにターミナルに迎えの車が待機しており、運転手の男性は私達の姿に気づくとこちらへ歩いてきて私達の荷物を受け取った。
「今からジオン自治共和国国防軍士官学校へ向かいます。荷物はホテルにお届けいたしますのでご安心下さい。」
運転手の言葉に頷くと、車に乗り込む。
今回私はジェフを残して別の部下を連れてきた。
名前はレヴィ(男性の姿の時はレヴィンと呼ぶ)。性別は女性だが、私と同じく男性として活動している。
背が高く、鋭い目付きだが整った顔立ちをしている。
サイド6で生活が困窮し、苦しんでいた彼女の家族を救った事から交流が始まり、現在は私の元で働いている。
今回は助手兼護衛として一緒にジオンへ来た。
彼女は私が女である事を知っている数少ない人間で、女性である、さらに彼女はとても賢く優秀であることからベストな人選だったと思う。
ちらりと彼女の方に目を向けたあと、私は走り出す車の窓へと視線を移した。
目に映る景色に、最後に見たジオンの町並みを思い出す。
ジオンを離れて7年もの月日が経った今、私がジオンに戻って仕事をする事になろうとは。
…もっと先の事だと思っていたのに。
なるべく昔の事を思い出さないように、静かに呼吸を繰り返す。
「…間もなく到着致します。」
…気づくと少し時間が経過していたらしい。
運転手の声に前を向けば、いつの間にか前方に大きな建物が姿を表した。
…これがシャア達の通っている学校か。
想像していたよりも遥かに大きい建物に驚きを隠せない。
ジオンに住んでいた時でさえ実際に見た事が無かった建物がここにあるとは…
正門に到着すると、警備に静止され運転手は車を停めた。
「上官の客人です。本日約束を取りつけております。」
懐から素早く紙を取り出して見せると、警備は紙を確認し私達の方へと視線を寄こした。
「…確認できましたのでお通り下さい。」
警備の了承とともに門が開くと運転手が軽く頭を下げて車を発車させる。
正門を抜けて広大な敷地に入ると、うっすらとした記憶だが、前世で見た建物が並んでいる。
遠くで学生達がグラウンドを走っている光景が目に入った。
この後は連邦の依頼主及び、急遽同席となった士官学校校長、ドズル・ザビとの顔合わせとミーティングがある。
最悪な組み合わせだが、受けてしまった以上はしっかりと進めなければならない。
警備が厳重な建物の前に来ると車は停止した。
運転手は運転席から降りると、私側の扉を開いた。
「足元にお気をつけください。」
「ありがとうございます。」
車を降りて建物を見上げる。
私にとっては最早ここが戦場だ。
警備の一人に案内され建物内に入る。
部屋の前に到着すれば、異様な程威圧感が漂っている。
扉の前に控える男達は私に視線を寄越すと、顎をくぃっと扉の方へ向けて"自ら名乗れ"と伝えているようだった。
…まったくもって不快でしかない。
仕方なく、扉の前へ立ってノックをすると、ハキハキとした声で喋りだす。
「失礼致します。本日約束しておりました、アラヤ・ストロムと申します。」
名乗ると、数拍置いて中から声がかかる。
「…入れ。」
扉が開き中へ足を踏み入れると、応接室に連邦の准士官と思われる男とドズル・ザビが既に座っている。
「お前が技術者のアラヤ・ストロムか。」
「はい。よろしくお願いいたします、ドズル大佐。」
軽く頭を下げると、ドズルはフンッと鼻を鳴らして"座れ"と私達に着席を促された。
・・
「…いくつか機器を導入して頂けるとスムーズに情報の伝達が可能になります。生徒個々の記録がリアルタイムに更新されるので、容量も膨大になりますから。」
私はこの学校での記録とその管理を効率的に行いたいという無茶振りを今の技術でできる最大限で応えた。
「…そうなると、費用がさらにかかるだろう。」
「そうですね。…しかし、初期投資と思っていただければ。実は私が今開発している製品がありまして。…是非御校で使用して頂ければと思っております。」
鞄の中から箱を取り出して開けて見せる。
また、ノートパソコンも取り出して画面を向けた。
「これらは?」
「当社の製品です。…御校でこちらを使用し、宣伝をして頂きたいのです。当社としてはそれだけで広告になります。…利益に応じた広告費用もお支払い致します。」
笑顔でそう言うと、准士官は顎に手を当てて考え込み、ドズル中将はそんな事などどうでもいいといった様子でノートパソコンの方に夢中になっていた。
私は契約とともに、新たな製品の売り込みに来たのだ。
この世界でのコンピューターはまだまだ分厚く、軍の使用しているモニターすら大きい機械と一体化している。
…つまりは、不便のひと言に尽きる。
宇宙に住んでいるだけのことはあって、衛生(ミノフスキー通信も含め)を駆使した各コロニーの通信技術は優れている。
が、使っている物の大半は昭和の名残のような機械達。
そんな中生み出したノートパソコンは正に今の世界では不思議な存在だろう。
あのブラウン管テレビのようなパソコンから薄型の物への進化と、早い段階でのスマートフォンやタブレット端末の実装を私は目指している。
スマートフォンは、本当に早く欲しい…が、やはり段階を踏んでいったほうが時代の流れに沿った感じがしていい。
…ここにいる軍人達が心血注いでMSを開発するのなら、私はその間に民間に向けたスマートフォンやタブレットなど、便利な道具を普及させてひと儲けさせてもらうつもりだ。
「1台は無料で差し上げます。その他必要になる個数は価格はこちらの機器を利用して頂けるのであれば特別価格で提供致します。」
通信回線も問題は無いだろう。ジオン内の通信会社を設立すればいい。
…今軍事強化を進めているザビ家…その中でも特に野望に燃えている男は絶対に欲しがるだろうから。
「…条件は何だ。その表情を見るに、何かあるんだろう?」
さすが、ドズル・ザビだ。
タダではない事などお見通しだろう。
「ああ、いえ。条件と言うほどでもありません。…この設置を含めた作業に支障が出た場合の保険が欲しいのです。」
「保険?」
ドズルは怪しいと疑う表情を隠さずこちらに尋ねる。
「ええ。私は外部から来た人間ですから、不満を持つ方がいらっしゃるかと思いまして。」
"余計な事"が起きないような保険。
私は二人の男の顔を交互に見つめながら話を始めた。