北方水滸伝
宿元景。そう呼び掛けられ、振り向くと、あまり会いたくはなかった人物達の内の一人がいた。
童貫元帥の副官。
「鄷美。何か用が?」
「いや、たまたま見かけたからな」
そう言い、宿元景のとなりに腰をかけた副官は前に広がる景色に目を細める。
「穏やかだな」
「私を、叱責に来たのか?」
「そう言わないでくれ。本当に、たまたま見かけて、声をかけただけだ」
呆れが混じった顔をしたまま、副官はため息をつく。
「宿元景。私たちは、お前の騎馬隊を信頼している。もちろん元帥も例外ではない」
「次こそは勝つ。次が与えられれば、の話ではあるが」
「その意気だ。元帥も、私たちも、お前が生きて、勝って、帰って来ることを願っている」
いきなりの言葉に、宿元景は思わずたじろいだ。
「感謝する」
曇りなき蒼穹を見上げ、掠れんばかりに言う事しか出来なかった。
梁山泊との再戦が迫っている。
