北方水滸伝

 開封府は、眩い夕日により、紅に染まりつつあった。そんな中、禁軍寮には、艶やかな音色が響いていた。

 畢勝は、その音色の元であろう同僚の部屋に入る。

「やあ、鄷美。瑟か」

 その声に、奏でていた人物が手を止める。

「畢勝か。調練が終わったのか、お疲れ」

 鄷美は振り向き、入ってきた人物に微かに笑みを浮かべ挨拶を交わす。それから向かい合う様に座り直し、畢勝に席をあける。畢勝も礼を言い、そこに腰をかけた。

「驚いた。あの音色、手慣れているな」
「嘗て、ある男に教えてもらったのだ」
「ある男?」

 畢勝の問いに、豐美は寂しそうに微笑む。

「今は、どうしているだろうか。アイツなら、将軍になっているかな」
「東平府か?」

 ああ、と微笑んだ鄷美は、静かに瑟を撫でた。同僚の珍しい表情に、畢勝は驚いた。

「また、奏でてくれるか?」
「喜んで」

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