北方水滸伝


「それから、奥方からの伝言だ、林冲。沢山のお土産話を待ってます。ゆっくり来てください。だとな」
「そうか、張藍が。そう言ったのか。困ったな」

 林冲は額に手を置い笑った。そうすることで、楊志からは林冲がどの様な顔をしているかは見えない。あの豹子頭林冲がこの様に見るからに心が分かることがあるのか、と感じていた。

 楊志はふっと息を吐くと、林冲に背を向けた。

「待て。待ってくれ、楊志」

 声を荒げて林冲は楊志の手を掴もうとする。しかし、その手は楊志をすり抜け空をきっただけだった。

「楊令のこと、頼んだぞ」

 楊志が振り向き、はっとする笑顔と共に、そう言うやいなや、あたりに一陣の風がふいた。林冲は舞う砂ぼこりに目をつむった。

 再び目を開いた先には、楊志の姿はなく、ただ替天行道の旗が棚引く二竜山の景色が広がっていた。






けど、二竜山にいて張藍の話したら、九巻が。と思ったのは書き終えた後でした。


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