第一章
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緊張感のある雰囲気の中、始まったタイブレーク式の勝負。テニス部の他の部員も、何だ何だと興味津々で見学に来ている。
私はテニスの試合に詳しくないから、隣で見ているまつに色々解説してもらいながらたけを応援することにした。
「サーブ、私はどっちでもいいぜ」
「先攻お前にやるよ」
「そりゃどうも。そんじゃあ、いく、よ!」
そう言いたけがデュースサイドからサーブを放つ。その動きに、見ていたテニス部全員がたけが初心者ではないことがすぐに分かったようだった。
レシーブした宍戸くんも、「なんつー重いサーブを打ちやがる」と打ち返している。これは油断してはいけないと気を引き締めたのか、表情が変わった。
それから打ち合いが始まった。
「なんやあのお嬢さん、めっちゃ上手いやん」
「なんで女テニでプレイしないんだ」
「あいつ竹川だよな。よくいろんな部活に助っ人してるっていう。テニスは聞いたことなかったが普通にめっちゃうまいじゃん」
そういった声がちらほらとレギュラー陣以外のところからも聞こえる。
それから、2ポイント目。3ポイント目……と繰り返し、宍戸くんとたけがともに3ポイントとなりチェンジコートとなった。
「タイブレークって何だろうと思ってたけど、こういうのなんだね」
「そっか、うめはしっかり見るの初めてだっけ。そう。それに、タイブレークのチェンジコートは、2組の合計ポイントが6の倍数になったときに行われるんだ」
「チェンジコートってことは休憩時間?」
「うーん。タイブレークの場合は、ベンチに座って休むことできないんだ。立ったまま水分摂取するくらいで、すぐにコートを入れ替わるんだよ」
「よく知ってるねまつ」
そう感心しながら言う滝くんに「まあね」と笑顔で答えるまつ。その笑顔は少し寂しげだ。まつは時折この表情をする。普段が元気な分、なんだかとても切なくなる。たけの過去を思っての表情なのか、それとも何かもっと違う何かがあるのか……。
「ん?」とこちらを見てくるまつはいつもの表情に戻っていた。なんでもないと返事をし、コートにいるたけに声援を送る。
それから打ち合いの元、宍戸くんが7ポイント、たけが6ポイントとなっていた。宍戸くんがリードしている。
「なかなかやるなお前」
「それはこっちのセリフだろ」
サーブの準備をしながら、宍戸くんとたけが話している。「正直すぐ終わると思ってたんだけどな」とこぼすたけ。
正直テニスをする二人の姿はかっこよくて、目的を忘れてしまうことがあった。たけ頑張ってと手を握りしめながら応援する。
皆が固唾をのんで見守る中、たけが宍戸くんのサーブを打ち返そうと構える。
その時……
「竹川たけくん!氷帝テニス部のマネージャーになってくれるらしいな。それにその姿、美しい。君のテニス姿がまた見られるなんて素晴らしい」
そう言いフェンスに張り付くようにしながら話すのは……
「うわぁあ!でたな変態音楽教師!きしょ!こっち来んな!変なにおい振りまくな!」
「うわぁ榊じゃん。相変わらずきしょい」
そう言い顔をしかめる二人。私も思わずうわぁって言ってしまった。他の部員たちも啞然としている。榊太郎。氷帝テニス部の監督、そして音楽教師。正直変態臭くて苦手。
「第一マネージャーじゃねぇし!いまその勝負を……あ」
そう榊先生を指さしながら言うたけが固まる。私とまつも同時に「あ」と声を上げた。
「ゲームセット。ウォンバイ宍戸」
「えぇえええええ」
榊の乱入によりリターンに失敗したたけ。宍戸くんが8ポイントとなり、負けとなった。
たけは今のは無しだろ!と最初は抗議していたが、負けは負けと諦めた。
「ふ。なかなかな試合じゃねぇか。さっそく明日からよろしく頼むぜ3人とも」
「まじかよ」
「最悪だ……」