第九章
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今年の氷帝の全国大会は、青学との激闘を最後に幕を閉じた。悔しいけれど、すべてを出し切った勝負。
最後の氷帝コールを浴びながらコートに立っている跡部とまつと滝を見て、改めてどれも凄まじい試合だったと思い返さずにはいられなかった。
この全国大会、私は青学を、周助をこれから応援していく。氷帝を負かしたんだ。絶対に優勝だと青学の皆に言葉を贈った。
不動峰と四天宝寺の準々決勝開始のアナウンスが入った。私は周助や青学の皆と共に、その試合に向かっていた。周助に誘われた時、私は氷帝と一緒に行動しようとしたが、まつやうめたちに大丈夫だよと伝えられ、皆の言葉に甘えて一緒にいる。
私が去る時、現れた立海の皆とまつが何かを話していた。彼らに囲まれていたためまつの様子はあまり見えなかったが。
「勝った方が、周助たちと当たる。そういえば今回の試合、周助はでなかったな。次は出るの?」
「どうだろうね。四天宝寺も不動峰も、どちらも戦いたい相手ではあるよ」
私はのどが渇いたため、何か飲み物を買ってから合流することを伝え、周助たちと別れる。
自動販売機のあることに向かうと、乾と桃城と菊丸が怪しげな様子で何かを見ていた。何してんだ不審者共。
乾が何かつぶやいていた。彼らの視線の先には、越前と桜乃ちゃんがいた。
「お。あの二人くっついたの?」
「うんにゃ。全然ダメダメのダメ」
「越前の恋愛成就率0%だな」
「あたけ先輩!聞いてくださいよー」
どうやらおにぎりを差し入れしに来た桜乃ちゃんへの態度に3人が不満を持っていた様だ。桜乃ちゃんは越前に思いを寄せているのは前に会った時に話をしたことがある。
「あんないい子はなかなかいないし、いい組み合わせな気がするんだけどな」
そんなことをぼやいていたら、木から四天宝寺の遠山が落ちてきてたまたま通りかかった泥棒にテニスボールを決めて撃退するという何ともびっくりな展開が目の前に繰り広げられた。
遠山はどうやら越前と勝負をしたかったらしい。コシマエ呼びにちょっと可愛いなと思う。先ほどの事件で落としてしまった桜乃ちゃんのおにぎりを美味しそうに頬張る遠山。合宿の時はあまり関わらりがなかったが、食べ物を大事にする遠山の姿に、絶対にいい奴だと確信した。腹下さないか心配ではあるが。
桜乃ちゃんが少し嬉しそうにしているのが気に食わなかったのか、越前は桜乃ちゃんに行こうと声をかける。なんだお前も可愛いとこあんじゃん。
それから白石に呼びかけられ去っていく遠山。向こうにいる白石が私を見つけ、誰かを探すように周囲を見ていた。
「先輩たちは東の覗き魔ッスね」
「おい私も入れんな」
去ったと思った遠山が爆速で戻ってきた。どうやら、対戦相手の伊武が手首を負傷し棄権したらしい。何が起きたんだ。
越前との試合を再び投げかける遠山。それを白石が止めに来た。
越前のことをとんでもない勘違いして話す分にはまだ我慢できたが、真田をめっちゃ強いゴリラと称したタイミングでもう我慢できず笑ってしまった。まつ、ゴリラ仲間がいてよかったね。
すると白石が手の包帯を解き始めた。あ、あれケガじゃなかったのか。とんでもない話を遠山がして大人しく準々決勝に戻っていく。去り際に遠山を抑えるための嘘だと言って白石も戻っていった。
「しれっと勝利宣言していったな」
「ですね」
にしてもまつと仲が良い奴って本当に変な奴多いな。あれ、待てよ。それなら私もその中に入るのか?いや。それはないな。うん。
私はついでにと周助の分の飲み物を購入し、皆と合流した。試合は、四天宝寺の圧勝だった。
千歳と橘の試合が始まり、二人が以前は九州の二翼と呼ばれていたことを知った。そして因縁があることも。橘が千歳のボールを目に受け、けじめと言った。千歳の無我の境地と橘の猛獣のオーラがぶつかり合う試合。
5-4で橘がリードしている中、まつとうめがやって来た。
「お。やってるね」
「不動峰は2試合とも棄権だったんだね」
「なんかすごいオーラの対決しているんだけど」
まつは少しだけ目元が赤かった。泣いたのだろうか。けれど、表情や声は明るい。
千歳が手塚を指し、無我の境地の更に奥にある3つの扉のことを話す。そして、キラキラしたオーラを纏いながら突然7打目などと語る。
「やばい私千歳に恋したのかも。めっちゃ千歳がキラキラして見える」
「な、なんやてまつ?!アカンそれはアカン!」
呟いたまつの言葉に忍足の従弟が焦ったように大きく声を出す。そんな彼を白石が叩いていた。
それから試合は橘があばれ球で攻めるも、千歳の、四天宝寺の勝利で終わった。握手を交わす二人の友情に思わず頬が緩む。
準決勝。青学と四天宝寺のカードとなった。
私はこれからミーティングに入る青学の皆と別れ、まつとうめの元に行く。
まつはどこか懐かしそうに四天宝寺の方を見ていた。そんなまつの元に、忍足従弟が飛びつくようにやって来た。相変わらず速いなあいつ。まつの元気な姿に嬉しそうにしている。
「お疲れ様、謙也。そういえば、ねずは?」
「家の都合で大阪に戻っとる。まつが元気なことは白石から伝わっとる。泣いて喜んどったらしいで。絶対に会いに行くって」
「いつでも」
「おう。ほな、さっそくいつものやるか」
「何にする?」
「指相撲や!!」
かかってこいといって二人が固く握手を交わす。さっきの千歳と橘の握手と違って、何も感動がおきない。そして指相撲の姿勢に入り小石川がはじめといい、全力で指相撲をする二人の姿に呆れる。
どうやら勝ったのはまつらしい。四天宝寺の監督からミーティングの声がかかり、四天宝寺の皆とまつが別れる。四天宝寺は氷帝の私たちを気遣ったのか、どこまでも明るかった。
戻ってきたまつの表情も明るかった。しかし、やはり目元が赤いのが少し気になる。聞くべきか一瞬悩んだが、普段めったに涙なんて見せないまつを心配して声をかけた。
「大丈夫かまつ?」
「ん?平気だよ。皆のおかげでね」
「なんだよそれ。照れるじゃん」
「まつはさっき、立海の人たちにも声かけられたね」
「うん。ちょっと泣いたけど、おかげでスッキリした。元気も貰えたし」
「よかった。そういえばさっき遠山が、真田のことゴリラって言ってたぜ。ゴリラ仲間ができてよかったなまつ」
「だから、ゴリラは森の賢者だから!」
「真田くんが、賢者……」
「何か賢者って感じじゃねえよな」
それから氷帝のメンバーとも合流し、準決勝の会場がアリーナコロシアムで行われることが分かった。あの会場で試合ができるなんて羨ましいなと思ってしまう。
私たちは、青学と四天宝寺の試合に向かった。まつは途中で屋外テニスコートで開催される立海の準決勝の方にも顔を出すかもと言っていた。
そう言えば、合流した時、樺地が坊主になっていて私たちは驚いた。どうやらあの試合の後、やはり髪を切ろうと思った跡部を、樺地が止めたという。そのかわりとでもいうように、跡部を止めた樺地は自らバリカンで髪を剃ったらしい。樺地、お前ってやつは。そんな樺地に、私たちはMVPの称号をあげた。