第九章
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今日、雨で中断していた準々決勝が再開される。
早くに目を覚ました朝。何だかソワソワして落ち着かなかったので、久しぶりに走っている。昨日の雷雨が嘘のように空は晴れ渡っており、雲ひとつない一面の青が広がっている。
家に着きシャワーを浴びて準備をしていると、幸村から連絡が来た。
「おはよう幸村」
ーやあ、まつ。おはよう。少し話したいなと思ってね。今大丈夫?
「もうすぐ出るけど、少しなら平気」
ーもう行く時間なのかい?
「うん。今日は9時から昨日の試合の続きがあるから」
ーそうか。昨日の雨で一時中断しているんだったね。
「立海はどう?」
ー昨日雨の前に決着がついているから、今日は準決勝だけだよ。
「流石だね。青学へのリベンジ、悪いけど氷帝がさせてもらうね」
ーふふ。言うね。決勝で会えるの楽しみにしているよ。待ってるから。
「激励ありがとう。皆にもよろしくね」
ーうん。
幸村は返事をし、何かまだあるのか無言の時間ができる。またねと声をかけようとしたタイミングで幸村が何か話す。
「幸村?」
ーまつ。……いや。これは電話越しで、このタイミングで言うべきことじゃないね。何でもないよ。試合頑張って。またね。
「?うん。ありがとう。またね」
そう言い電話を切る。幸村は何を言おうとしたんだろう?
時計を見ると、そろそろ出ないとまずい時間になっていた。私は荷物を持ち出る。部屋を出るとき、以前日吉のカメラで撮った氷帝の皆との写真が視界に入った。大丈夫、そう言い聞かせ私は家を出た。
会場に着きトーナメント表を眺める。昨日、準決勝進出を決めたのは立海だけだ。あとは今日の午前に決まる。そして午後に準決勝。なかなかにハードなスケジュールだ。
いよいよ第4試合。ダブルス1、宍戸と鳳の相手は、まさかの菊丸と大石だった。大石は手首のケガでレギュラーから離れたと聞いたが、このタイミングで戻って来たとは。まさに、青学と氷帝の黄金ペアの戦いだった。
試合は接戦を繰り広げていた。五分五分の試合展開の中、青学のリードを許した氷帝側が昨日の乾のサーブを上回る速度のサーブを放つ。滝がその速度に目を見張っている。
試合はタイブレークにもつれこんだ。菊丸がダブルフォルトを決め、氷帝が大手をかける。
「決めろ!」
跡部が声をかけ、宍戸が分かっていると返す。宍戸、鳳、頼む。跡部まで繋いでくれとひたすら祈った。
追い詰められた青学はそれに反するように、むしろ呼吸があっていくあっていく。すると突然二人がオーラに包まれた。
「あれは……
「は?!
跡部が驚き呟く単語に、うめも驚いた反応をする。青学の二人は掛け声もアイコンタクトもなく試合をしている。何が起きているの?
榊も驚いたように解説をする。絶体絶命の時に起こりうるダブルスの奇跡。ダブルスの世界トッププロの試合でしかみれないようなものらしい。それがこのような場面で起こるのか。青学の底の知れなさにまたも驚かされる。
そんな青学に氷帝は追い付かれるも、氷帝は大手をかけていた。宍戸と鳳が必死に対抗する。しかし、鳳が構えるもボールが来ることはなかった。
「あれ?何が起きたんだ?」
菊丸が大石のラケットを掴んでいる。青学の二人は何が起きたんだといった表情をしている。先ほどの榊の話と、大石の手首のことを踏まえると、同調した菊丸が大石の手首の限界を悟り止めたのだろうか。
氷帝が7-6で勝利した。
しかし、ベンチに戻ってきた宍戸と鳳はどこか悔し気な様子だった。榊との会話を聞いていると、彼らはまだまだ成長する。そう思えてならなかった。
「2勝2敗。やっぱりここまできたね」
「何か予想通りと言っちゃあ、予想通りだよな」
「次のシングルス1で決まるね」
「クソクソ青学。しつこいっつーの」
「向こうも同じことを思ってそうですよね」
「すごい試合だC。これで勝ったら気持Eー!」
「ジロー、張り切っとるところ悪いんやけど今回は補欠や」
「Aー」
「ウス」
「芥川さん、一緒に応援しましょう」
「あとは、アイツに託そう」
宍戸がそう言い、皆が彼の方を見る。相変わらず変なポージングを取って、氷帝への声援を受けている彼。
ラケットを持って張り切っていた芥川にどいてろと声をかけ、コートに向かう跡部。
勝者は跡部、そんな声援を奪うように越前くんがジャージを投げ自分の勝利宣言をする。二人で高笑いをした後、越前くんに俺が
それからもお互いにお互いを挑発しあっている。
「笑い死にしそうだ。なあ樺地、まつ」
「ちょっとこっちに振らないでいただけますかね。ねえ樺地」
「ウス」
「まつさん、絶対に勝つんで」
「いや。だから別に私に言わなくていいから。ねえ樺地」
「ウス」
「まつも樺地くんに同意求めないの!」
跡部をサル山の大将と言う相変わらずな越前くんに、負けたら坊主になってやるなんて言う跡部。越前くんもそれに返す。負けたら坊主、意味が分からん。この二人とジャッカルと銀さんと共通項ができるなんて誰が想像するだろうか。
そんな中、試合がついに始まった。しかしなかなか構えの姿勢のまま始まらない。水を打ったような静寂がコートを包む。
「どうなっているの?」
「きっとあの二人」
「頭の中ではすでに始めている」
それから不意に跡部がサーブを放つ。静寂を切り裂くような音だ。それに凄まじいバウンドとスピードで返す越前くん。あれは以前、氷帝の敗退を決定させたリターンだ。
それをあっさりと返す跡部。氷帝は負けない。過去を断ち切り、新たな歴史を刻む。そう宣言するように、凄まじい攻防が幕を開けた。