第九章
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氷帝は獅子楽中に勝利し、準々決勝に駒を進めた。次の準々決勝、私たちは青学と比嘉の勝利した方と当たる。
まつを助けてくれた比嘉中。だが、先ほど六角の臨時応援団として周助達と一緒に試合を見ていたが、かなり癖の強い奴らだった。正直あそことぶつかるのは避けたい。まあ周助を応援していれば自然と青学の勝利を応援することになるんだが。
氷帝は2回戦の中で立海の次に早く決着がついたため、他の試合を見に行く余裕があった。なんか先ほど、立海の試合を見ていたであろう人達から、ものすごい雰囲気で試合をしていたといった話が聞こえてきたが、何かあったのか。完全勝利をした立海の選手たちに、幸村が動きが悪すぎると檄を飛ばしたという。アイツまじで底が知れなくて恐ろしいよな。
「青学の試合を見に行くけど、まつたちも行くか?」
「比嘉との試合だよね。行く」
「私も」
私が青学と比嘉の試合を見に行くか聞いたら、何やかんやで氷帝の皆が来た。跡部は手塚の復活した姿を見るの楽しみだぜとか何とか言ってた。
試合は長期戦になっているようだった。周助の試合は終わっており、新たなカウンターを披露して無事に勝利を飾ったという。比嘉はまたボールを監督にぶつけようとしたみたいだが、金髪の平古場というやつは邪魔をするなと指示を無視したらしい。ただの悪いだけの奴らじゃないようで少し安心した。そして、シングルス3の越前が試合中に相手のビックバンという技を受けて吐血したとも聞いた。
「いつか死人でそう」
「確かに」
「テニスで死人出たらヤバいだろ」
「にしても、なんか菊丸が二人に見えるんだけど。私、頭イカれた?」
「元からイカれてるだろ」
「なんだとたけこら」
「けど私も菊丸くんが二人に見える」
まつからどつかれた。けど菊丸が二人に見えるのは事実だった。昨日、周助と電話した時、大石が手首のケガが完治しておらずレギュラーを手塚に譲ったと聞いた。それは黄金ペアで試合できないということだ。菊丸にも思うことがあったのだろう。周助も自分の可能性を試すとか言って橘に試合を挑んでいた日もあった。皆、それぞれ進化していると実感する。
菊丸が勝利を飾り、青学の準々決勝進出が決まった。
氷帝の次の相手は、再び青学だ。
海堂と乾のダブルスも持久力勝負で比嘉の新垣が試合続行不可能となり青学が勝利した。海堂はパワーリストをつけたまま試合をしていたとかどうなっている。
団体戦の決着はついているが、観戦者は一向に減らなかった。全員が次の試合を待っている。
シングルス1。手塚と木手の部長対決。会場の皆が手塚を見る。
あの日、関東大会の初戦の日以降、手塚がテニスする姿は見ていない。肩はどうなったのか。大石との試合を見た不二は、今まで以上だよと言っていたが。
手塚と木手の試合が始まった。眼鏡対決だと呟くうめにちょっと笑った。
沖縄武術を極めた木手。はじめはどんなボールも拾い返していたが、突然手塚がオーラに包まれた。
「やばい今度は手塚にオーラが見える」
「私も見えるから安心してまつ」
「あれ、無我の境地?」
いや。何かが違う。全てが倍返しになっている。あれは、無我の境地の更に奥にあると言われているもの。確か名前、何だっけな。
「あれは、百錬自得の極みか……?」
跡部が驚いたように呟く。ああ。それだそれだ。向こうで見ていた幸村が「久しぶりだ、手塚のあれを見るのは」と言っている。以前にも見せていたのか。跡部は知らなかったということは、どうやらケガの関係で3年間封じていたらしい。
跡部が更に強くなって戻ってきたライバルの姿に高笑いをする。嬉しそうなこって。
「跡部様、おいら弁当作って来たんだ!」
「誰?」
突然女の子の声がする。見ると可愛い女の子が跡部にお弁当の差し入れをしている。それを「邪魔だ雌猫!」と一蹴する跡部。
「ちょっと跡部!……ごめんね。あれ?あなた確かさっきの」
「堪忍な。早よ北海道帰った方がええで」
「北海道ってことは、1回戦の学校の?」
まつが一蹴した跡部の態度をみて女の子にフォローを入れるが、何かに気が付いたようだ。忍足も何か気付いてそうだ。うめの言葉に、言われてみれば、一回戦の椿川に確かにあんな子いたかもしれない。まさかスパイ?けどこのタイミングで?
そんなことを思っていたら、まつが優しく女の子にごめんねと再び謝り帰るように促していた。すると女の子が目を見開く。
「あああ!まさか!まさか、アンタが氷帝の
「は?!」
「間違いねえ!同じマネージャーとして尊敬してるべ先輩!」
そんなことを言って女の子はキラキラした瞳でまつに握手をし、その手にお菓子を渡し去っていった。嵐のように去っていく彼女を見送りながら、うめと共に唖然とした。
「ねえ。氷帝の
「知らね」
「また変な名前がついてる。しかも今までの中で明らかに一番おかしい」
「
「うめ言ったらアカン」
白くなっているまつの肩を私は暖かい眼差しをもって静かに叩いた。「生暖かい目で見るな」と再びどつかれそうになるのを避ける。
「ゲームセット」
「あ。手塚の勝ちだ」
そんなやり取りをしていると部長対決が終わった。手塚の勝利。青学も氷帝と同じく全ての試合を落とすことなく勝利した。
試合が終わり、周助の元に行く。
「お疲れ様、周助。試合見れなくて残念だった」
「ふふ。ありがとう。それにしても、また戦うことになったね」
「負けないからな!」
「うん。僕たちもね」
そう笑顔で会話を交わす私たち。
「越前くん、また戦うね」
「まつさん。明日、負けませんから」
「氷帝だって!」
それからまつは手塚に改めておかえりなさいと挨拶をしていた。うめも菊丸たちと言葉を交わしている。
氷帝の皆もリベンジを誓っていた。明日の準々決勝、全力で挑むぜ。
今日の一番長く行われていたのはこの青学と比嘉の試合だった。勝者と敗者、それぞれが思いを抱えて会場を後にしようとしていた。そんな中、まつが比嘉の人たちと話をしているのを見かけた。
「じゃあ皆、あの12mくらいを一歩でいけるってこと?」
「やんどー」
「幅跳びの世界記録じゃん!髪様、オリンピックにも出ればいいのに」
「下らないこと言わないでいただけますか。それに、あいやはそう見えるだけで……」
木手が呆れながらまつに縮地法について解説している。
オリンピックは平和の祭典だ。そんなことを殺し屋の異名をもつ木手に言うまつに、多くの人が相変わらずだなと思ってそうだ。