第八章
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今日から、氷帝、青学、立海、四天宝寺で合同合宿が行われる。
海の近くらしく、氷帝の皆で相変わらずATOBEと書かれたバスに乗り、現地へ向かう。その際も、まつはどこか上の空で窓の景色を眺めていた。
「なあ。まつのヤツ、何かあったのか?」
「俺も気になります」
そんなまつの様子を見ながら、向日や日吉が私に聞いてくる。跡部もまつを見つめている。
「いや。私たちも分かんねえんだ。話すと普通なんだけど、ああやって一人の時は何か考え事しててさ。聞いても別に何でもないと言ってはいるけど」
立海と何かあったのだろうかと思い聞いたが、違うと否定された。全国行きが決まって、精神統一でもしているんだろうかなんて思っていたが、何か違う気がした。
合宿の場所に着き、バスを降りる。立海が先に到着しており、切原あたりがまつに飛びつく勢いで挨拶をしていた。それに笑顔で久しぶりと挨拶をするまつ。よかったいつも通りな感じだ。その間に跡部と日吉が入り、何やら挨拶を交わしている。
青学も到着し、周助に挨拶をしに行く。どうやら手塚はまだ帰ってきていないようだ。全国に間に合うことを祈った。
「あとは四天宝寺だな」
「大阪からやからな。っと、あれちゃうか?」
そう言われ私とうめは初めて見る学校に興味をもつ。降りて来た選手たちは黄と緑の竹のようなデザインのユニフォームを着ている。ケガでもしているのか手に包帯を巻いているイケメン、野生児のようにぴょんぴょんははしゃいでいるちっこいヤツ、背の高いアフロ、金髪、坊主、眼鏡、ヘアバンド、つんつん頭、気だるそうなピアス。四天宝寺もキャラが濃そうだ。
そして、そのうちの一人の金髪がこちらを見て、指さすように大きく声を上げた。
「やっぱり!まつやー!!白石!見てみい、まつがおるで!!」
その発言にその場にいた全員が驚き、まつを見る。まつは「だから来たくなかったのに」と零している。何?まさかの知り合い?
まつの元に、金髪、眼鏡、ヘアバンド、坊主、つんつん頭が近づき声をかける。
「まつ久しぶりやね。なんかもー更にべっぴんさんになっちゃってー」
「こら浮気か!にしてもまつ、連絡もよこさんから高飛びでもしたんかと思ったわ」
「まさか氷帝にいるとは」
「元気にしとったか?」
口々にまつに声をかける四天宝寺の皆に、苦笑いするまつ。
「ほな久々にまつと謙也が会ったんや!謙也ー、準備ええか!」
「おういつでもええ!」
そんなことを言いながら、突然謙也と呼ばれた金髪が、鞄を置きまつの隣にたつ。まつもその様子に「え、やるの?ほんとに?」などと言っている。にしても、謙也ってことはこいつが忍足の従弟か。変態ではなさそうな雰囲気で安心した。
「位置についてー!よーい!」
「どん!」
「ちょ。謙也ー!あんたまた速くなってない?!」
「浪速のスピードスターをなめたらあかんっちゅー話や」
「私どちらかというと長距離派なんですが!」
「関係あらへん!」
眼鏡とヘアバンドの掛け声で、突然に始まった短距離走。二人とも会話をしているが速い。坊主がそこまでなどと言い、「勝者謙也ー」などとつんつん頭が言っている。忍足従弟がガッツポーズを決めている横でまつは全力疾走したのか肩で息をしている。
「なんでまた、こんなことしているかな。第一、もう体格差から言って無理でしょ。小春ちゃんも銀さんもタケジローも一氏も無理言い過ぎ」
「けど相変わらず二人とも速いわん」
「まつ、やから俺はタケジローちゃうって」
そんな怒涛の勢いで進む様子に、皆も唖然としている。
「ねーちゃんごっつ速いな!ワイ、遠山金太郎いいます。よろしゅう」
「見ない顔だね。ってことは1年生か2年生?松山まつよ。よろしくね」
「松山?まつ、苗字変わったん?」
「引っ越しもそれが理由なんか?」
「どおりで合宿の案内の時に気が付かんかったはずや」
「まあね。色々あったのよ」
「結婚したんか?!」
「そうそう実は……って、そんな訳ないでしょ!アホか!」
そう会話をしている。まつたち。会話の内容からして、もしかして……。
「まつの前の学校って、四天宝寺だったの?」
そううめと揃って言うと、まつが困り顔で肯定する。
皆が驚いていた。
「言ってないんかい」
「まあ、色々あって。にしても光、久しぶりだね。テニス部にいるなんて嬉しいよ。元気だった?」
「それなりに。ほんま連絡一つでも入れてくれたらええのに、薄情ッスわ」
「ごめん」
まつに親し気に話しかけるピアス。
四天宝寺が現れてから情報過多すぎて、ほとんどの人がフリーズしていた。まつが男子を下の名前で呼んでいるなんて珍しい。
包帯のイケメンが跡部たち部長が集まっているところに行き、挨拶をしている。どうやら彼が部長らしい。
それにしても、こんなに親しそうなのに、なぜまつは、来たくなかったのだろうか?それに昨日のあのリストを眺めていた時の表情や、ここに来るまでのあの感じ。何だか嫌な予感がした。
「あなたたちが氷帝のマネージャーさん?」
「ん?そうだけど」
そう声をかけられ私とうめは返事をする。声をかけてきたのは女の子だった。四天宝寺のユニフォームを着ているが、標準語で話しかけられ驚いた。この子が四天宝寺のマネージャーだろうか。
「根須ねずよ。よろしくね」
そう言われ、私とうめも自己紹介する。そして、あちらで四天宝寺や立海に絡まれており、この場にはいないがまつも紹介しようとした。
「知ってるわ。まつと私は親友だから」
そうバッサリ言われ、ちょっとムカっとした。何かマウントを取られた感じがした。うめもそれを感じ取ったのか、少し眉をひそめている。
「相変わらずまつは色んな人に好かれてるね」
まつの方を見ながら呟き、ねずは去っていった。その眼差しは、どこかで見たことある気がした。
「何かあの子、変な感じするね」
「まあ気にしなくていいだろ」
それから、四天宝寺とは初対面であったため自己紹介をした。昨年度の準決勝で立海とあたったらしく、立海の皆も四天宝寺は印象に残っていた様だ。
にしても金色といい真田といい本当に中学生かお前らとツッコミをいれたくなった。
早速練習にとりかかろうとなった。解散するときふと、まつと四天宝寺の部長の白石が何か話しているのを見かけた。まつが何か二言三言話し去っていく。その後ろ姿を悲しそうに見つめている白石。手を伸ばそうとしていたが叶わず、行き場をなくしたその手を見つめ、白石は静かに握り拳をつくっていた。その様子からまつと白石の間になにかあったのだと分かった。
まつは四天宝寺にというより、白石に会いたくなかったのだろうか?
「たけ。どうしたの?行くよー」
「あ。ああ今行く」
そう言い、私たちはマネージャーの仕事にとりかかった。
その道中、忍足の謙也の方がまつに絡んでいた。「謙也なんか今日、異様にテンション高くない?」なんて言うまつに顔を赤くしながら「それはお前に……」なんてく口籠っている。そして突然まつの手を掴む。
「まつ!俺ごっつ心臓バクバク言っとるんやけど、なんでやと思う?!」
「走ったからじゃない?」
「……。かもしれへんな」
なんだこいつ。そんな二人のやり取りを見ていて、氷帝の忍足が「まさか、前に言っとった謙也の初恋の人って」なんて零していると「ああー!侑士!それは言ったらアカン!」なんて喚いていた。忍足の従弟の癖に純情かよ。
そんな忍足従弟から立海の皆がしれっとまつを引き離していた。