第七章
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
まつと跡部くんが無事に部活に戻ってきた。
あの日はどうなるかとたけと一緒に冷やひやしたけど、よかった。あの次の日の部活、跡部くんは今まで見たことのない様子だった。来るなと言ったのは自分なのに、いないならいないで終始イライラしている様子に、侑士くんと一緒に困ったものだと話をしていた。日吉くんあたりは、跡部くんがまつに言ったことをストレートに非難していた。滝くんや宍戸くんも日吉くんほどではないが、まつと確り話せと言っていた。跡部くん自身も何か考え事をしている様子だった。
火曜日に青学と六角の合同合宿に顔を出した後のたけと合流して、まつの家に行き、次の日は来るかなと思ったが、来なかった。跡部くんも月曜日以降は部活で顔を見かけなかった。まつも跡部くんも意地っ張りだから、本気で心配した。このまま終わってしまうのか不安だった。
けど、今日の二人の様子は以前と、いや以前にもまして親密な様子が見て取れる。まつはあまり変わらないけれど、どちらかというと跡部くんが変わったような気がする。
「あの二人、早よくっついたらええと思うんやけど」
「……侑士くんもそう思う?」
「なんやうめも思っとったん?」
「まつは絶対に否定すると思うけど、まつと跡部くんって意外とお似合いな気がするんだ」
「あの王様とあんな風に対等に話しとる人を見るんは、初めてやからな」
そう言う侑士くんは、向こうで真剣な面持ちで話をしているまつと跡部くんの様子を見つめている。部長でもあり、生徒会長でもあり、財閥の御曹司である跡部くん。そんな頂点という場所に君臨している彼と、同じ目線で物事を見て意見を述べられるまつ。よく王は孤独だと言われる。その孤独に踏み入っていけるまつに、跡部くんが惹かれているように見えるのは私だけではないようだ。
まつは本当に関わると誰とでも仲良くなってしまう。ちょうどよい距離感を分かっていて、一緒にいて居心地がいい。前にたけとそんな話をしたことを思い出した。
「まつは誰にでも優しい。そんなまつが好きなんだけれど、その優しさが自分だけの特別でないことに気が付いたとき、ちょっと悲しくなるんだよね。我儘なのはわかってるんだけどね」
「あー、ちょっと分かるなー。まつって、独占欲が強い奴に好かれたら大変そうだよな。ヤンデレ製造しそう」
「た、たしかに」
そんな会話をした気がする。そんなことを思いながらマネージャーの仕事をする。何やら、新しい練習メニューを跡部くんが日吉くんにアドバイスしている。
あと2週間もしないうちに全国大会が開催される。全国大会は夏休み期間のため、大会開催の期間は4日間と短い。私たちのマネージャーとしての期間もあとわずかだと思うと、少し気合いがはいった。
そんな私たちに、願っていもない吉報がはいった。
なんと氷帝が開催地の推薦枠で全国大会に参加できることが決まったのだ。
連絡が来たのは日曜日で、私は急いで氷帝に向かった。侑士くんと合流し、喜びを分かち合った。それから、皆で部長である跡部くんを探した。たけも途中で合流し、テニスコートにいた跡部くんに声をかける。
あのプライドの高い跡部くんが簡単に了承するかどうかと二人で心配したが、彼が全国へかける思いの強さのも知っている。
氷帝の皆が、跡部くんに全国への意気込みを伝える。そんな中、連絡を受けまつが来た。跡部くんはやって来たまつの方をみて、勝気に笑う。まつはそんな跡部くんに微笑みながら頷いていた。
氷帝コールが校舎から鳴り響く。改めて氷帝のテニス部の人気っぷりに圧倒される。跡部くんはその声援を浴びながら、どいつもこいつも浮かれやがってと呟き、指を鳴らす。
「俺様とともに全国についてきな」
私たちの夏は、まだ終わらない。