第七章
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心地よい風が頬を撫でる。俺は静かに目を開けた。
窓を開けているからか、カーテンが視界の横でちらつく。どうやら眠ってしまっていたみたいだ。手術が無事に成功し、今日から始まったリハビリに張り切りすぎたようだ。
昨日、手術の後はしばらくベッドに張り付いている感じだった。安静も解除され、初回歩行としてトイレに行くときは足の動きがままならなかった。手術は本当に成功したんだろうかなんて心配もしたが、次の日には思うように体が動くようになっていた。
手術前は自分の思うように体が動かせない時もあったが、今は体が軽い。俺はそれが嬉しくて、柄にもなく少しはしゃいだ。リハビリもまだやりますと少し無理を言ってさせてもらった。しかし体は正直で、やはり体力が落ちているのか病室に戻りベッドに横になったら、そのまま眠りの世界に入っていたらしい。
ふと、手に何か温もりがあることに気が付く。なんだろうと思い見ると、まつが俺の手を握って眠っていた。ベッド横の椅子に座り、俺の手を握りながら眠るまつ。先ほどまでの夢も思い返し、思わず笑みがこぼれる。
俺は手を思わず軽く握り返す。するとまつがゆっくりと目を開けた。
「おはようまつ」
「ん。おはよう、幸村……って、なんで?!まさか私、寝てた?!」
自然と挨拶をするとそれに返してきた。しかし、すぐに状況を理解したのか目を大きくし驚くまつ。そして、手を握っていることに気が付き、ごめんと手を離そうとするが、俺がそれを許さないと更に少し力を入れて手を握る。
「あのー幸村さん。手、離してくれませんかね」
「まつから握ってくれていたんだよ」
「それはすみませんでした」
「なんで謝るんだい。寧ろ嬉しかったよ」
戸惑うまつの様子を微笑ましく見ていると、その目元が少し赤いのに気が付く。
「まつ、泣いていたの?」
「え?……うーん。あー、まあ。幸村が生きているの嬉しくて」
はじめは答えるのをためらう様子だったが、俺がまっすぐに見つめているとまつが遠慮がちに話してきた。その内容は少し予想外だった。驚く俺に「死んだように寝ていたから」なんて言ってくるまつに勝手に死なせいないでくれと伝え軽く小突いておいた。
「俺は、生きているよ」
そう言うとまつは笑った。先ほどまでまつの顔にあった陰りが少し薄くなった気がした。
それから、立海の皆がお見舞いにやって来た。まつが来ていることも喜んでいる様子だ。関東での敗北を糧として、皆が全国に向け気合を入れているようだ。
真田が自分から皆の平手打ちを受けたようで、頬が軽く赤くなっているのをまつと一緒に突っ込みをいれていた。
相変わらずな皆に安心する。またこのメンバーでテニスができることが嬉しかった。先ほど見た夢は、皆とまたテニスをしている夢だった。そこには、立海のマネージャーとしてまつがいた。まつが立海のマネージャーだったらいいのにと思っているのも事実で、単純な自分の夢に少し呆れた。けれど幸せな夢だった。氷帝が、跡部が少し羨ましい。
皆にリハビリや手術後の血液検査のため今月末まで入院し、来月からは外来でリハビリなどフォローしていく予定であることを伝えた。全国大会には間に合いそうだ。とんとん拍子で進んでいく予定に、皆も喜んでいた。