第七章
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いよいよ関東大会決勝当日となった。
私は関東大会受付の付近で、青学を、周助を待っていた。
今日はまつもうめも来るはずだ。周助と少しでも話ができればと思い、二人との約束の時間より早めに来ていた。
この前の夕方、急にまつから連絡が来て、越前がテニスし過ぎて寝ているから家まで送りたいということを言われた。周助に連絡を入れ、桃城が越前の家を知っているとのことであり、桃城に頼んで駅前に迎えをお願いした。いったい何があったんだろうか。
次の日に、まつに聞くと、切原と越前が戦ったということが分かった。そしてジャッカルがまた殴られたときき、どこまでも哀れなジャッカルに両手を合わせた。その夜に、周助と電話をしたとき、越前が膝を痛めていたこと、皆の目が充血していることに異常に反応していた話を聞いてなんとなく納得した。切原のやつ、練習試合の後にうめが言ってた赤目モードとやらになって暴力的なテニスをしたのだろう。
今日はそんな切原がいる立海と青学が戦う。
私は周助がいる青学を応援するつもりだ。それに、氷帝を負かしたんだから、優勝して欲しい。
青学とは我ながらかなり親しいと思っている。彼氏である周助もいるし、不動峰や聖ルドルフとの合同練習などのお手伝いにいくこともあった。一方の立海は、あの合同練習の時くらいしか会ったことない。まつはそれなりに立海の選手と仲が良いのか、どちらを応援するかというとき、はっきりとは答えずどちらも応援するといった様子だった。
「お待たせたけ」
「周助」
青学レギュラー陣がやってきた。周助に声をかけられ、その笑顔をみて胸が温かくなる。いつも通り竜崎先生やレギュラーの皆と挨拶を交わし、今日の試合への檄を送る。
「越前、この前は大変だったみたいだな」
「たけさん、どうもッス。けど、あんまり覚えていないんですよね」
「そうなのか?まつがテニスをし過ぎて寝ちゃったとか言ってたけど、どんなテニスをしたんだよ全く」
「まつさんが?」
「あれ?まつが越前を最寄駅まで送ったんだよ。覚えてねえの?」
私がまつの名前を出すと驚く越前。どうやら試合の時は、まつは傍にいなかったようだ。それに、その最寄駅まで送っている時も越前はずっと寝ていたのだろうか。
「越前、爆睡だったもんなー。俺が迎えに行ったとき、ベンチでまつ先輩の肩を借りて寝こけてたくらいだったからな」
「えっ。俺、まつさんに寄りかかってたんスか」
「ついでにその後、俺の背中に寄りかかってたぜ」
「その情報はいらないッス」
「なんだとー!家まで送ってやった優しい先輩に感謝しろっつーの」
そう言いながら笑顔で越前の頭を撫でまわす桃城。にしても、あの越前がそんなに爆睡するくらいの疲労。昔に聞いた無我の境地を開いた後のようだ。そんなやり取りをしているうちに、集合時刻が迫ってきていた。
「周助。私、最後まで見ているから」
「ありがとう。無理はしなくていいから」
「ううん。もう本当に大丈夫なんだ。周助のおかげかな、ありがとう。今日、絶対に勝ってね」
うん、と返事をし周助は私を軽く抱き寄せる。行ってくるね、と言って周助は試合が行われるコートに向かう。私はそのSEIGAKUの文字を背負う皆の背中を見つめていた。
青学の皆と別れ、まつやうめがやって来た。うめの隣にはちゃっかり忍足がいる。氷帝の皆も来ているだろうとのことで、それなりに人だかりがあるところで場所を把握した。あいつらって他校からも人気なんだな。
「王者立海の気迫、やっぱりすごいね」
「せやな。立海と青学。どちらも部長が不在とは、何とも不思議な感じやな」
「そうだね。って、忍足は自然にうめの腰に手をやるんじゃない」
「ええやん。やっぱり落ち着くわぁ」
「ちょっと侑士くん。恥ずかしいから」
「この変態眼鏡。うめから離れろ」
「たけも不二とイチャイチャしとったやん」
「イチャイチャ言うな!あれは激励だ激励!」
まつが忍足の手を叩くが、忍足は懲りずにうめをホールドする。きもい。けど、よく考えたら確かに私もさっき、周助に軽くとは言えホールドされていたなと思うと顔に熱がいった。
忍足をうめから引き離し、私たちは氷帝の皆と合流して試合開始を待った。
青学と立海の両選手がコートに並ぶ。最初並んだ時、立海全員が越前を見ていた。この前の越前が爆睡をした日、あの場に立海全員がいたのだろうか。そして、副部長同士の握手の際にあの普段の様子からは想像できないなような偉丈夫っぷりで大石が立海に勝利宣言した。その後、たどたどしい感じになっていたが、青学の皆が親指を立てて大石を讃えていた。
第一試合。青学は海堂と桃城の2年生ペア。対する立海は、あの哀れなジャッカルと丸井だった。
パワーリストを付けたまま行う立海選手に対し、海堂と桃城は外すように言うが、外させてみろと挑発で返される。得意のブーメランスネイクをブーメランスネイクで返された海堂は放心に近い状態で試合をしており、桃城ひとりで奮闘している。まつが、海堂の名前を呟き心配そうな面持ちで見ている。無理がたたり、桃城が足を負傷した。そんな桃城に海堂がバンダナを外しながら近づき、桃城に使えと渡す。
「一人でかっこつけんじゃねえ」
「うるせえこのおセンチさんが」
そんな軽口をたたき、いつもの二人に戻った。海堂はジャッカルに持久力勝負をもちこみ、奮戦し1セットを奪取した。しかし、守備と攻撃の役割分担を徹していた立海が危険予知をしたのか役割を超えて行動し、6-1で立海の勝利で終わった。試合後、立海の二人は青学の二人を認めるようにしてパワーリストを外した。
立海は真田が全員にパワーリストを外すように指示していた。全力で行くようだ。しかし、どこか急いでいる感が否めない。何かあるのだろうか。
第二試合。青学は大石と菊丸の黄金ペア。立海は仁王と柳生。コート上の
「なんだ、まつ。柳生とずいぶん親しげだな」
「立海の人たちとはそれなりに話す機会があっただけだよ。あんな風に挨拶する柳生は珍しいけれど。なんか、あの感じ……」
「あーん?」
「いや。だた、ちょっとびっくりしただけ」
そんな跡部とまつのやり取りを聞きながら試合を見る。すると菊丸が仁王のボールを受け失神した。倒れる菊丸にうめが軽く悲鳴を上げている。担架で運ばれようとした時、菊丸がアクロバティックに起き上がった。どんな起き方だよあれ。怒りそうになった大石に冷静さを取り戻させる菊丸。青学が立海から1セット先取した。
しかし、柳生のレーザービームが出て黄金ペアが押され始めた。まつに加え、跡部もそのレーザービームを見ていてどこか訝しげな眼をしている。大石が菊丸の卓越した動体視力を信じレーザービームに目を慣れさせようとしてたが、突然、仁王がレーザービームを打った。今までの柳生のより格段に速い。
「なんで仁王くんが柳生くんの技を?」
「いや、あれは」
「やはり仁王が柳生で、柳生が仁王だったか」
「跡部、気付いとったん?」
「何となくだがな。前に見たときのレーザービームより遅いのは青学に手加減している可能性も考えたが、あの立海がそんなことをするか疑問だった。それに、仁王に化けている時の動きや立ち方、それとなく柳生っぽく感じていただけだ」
押されている二人に、竜崎先生が何か語り掛けている。前に練習していたあのフォーメーションをするのだろうか。そして、思った通り大石が前に出てゲームメイクをするフォーメーションになった。大石のテリトリー。前に見たときは未完成だったが、この試合に間に合わせて来たのか。流石だな、黄金ペア。しかし、奮戦虚しく青学は敗れた。
「あいつら、まだまだ進化しそうだな」
「俺。あの青学の二人と、宍戸さんと一緒に闘いたかったです」
「そうだな、長太郎」
まつが何か連絡が来たのか、携帯を取り出した。立海のベンチを一瞥した後、少し席を外すと言ってどこかに行ってしまった。青学のベンチにいた越前も同じようなタイミングで席を外しどこかに向かって行った。よく見ると、立海のベンチに真田の姿もなかった。
ここまでダブルスを2つとも落とした青学は、残りのシングルスをすべて勝つしかない。次は乾の試合。乾が勝てば、周助の試合になる。
私は握りこぶしをつくり、コートをじっと見つめていた。
第三試合。乾と柳の試合が始まろうとしていた。