第六章
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私が不法侵入者だと思った二人は、跡部と樺地だった。私の渾身の枕攻撃を喰らった跡部は青筋を立てながら、部屋に押し入ってきた。
だが、私の様子から風邪をひいたと分かったのか、すぐに布団に押し込められ枕を押し付けられた。ちょっと窒息するんですけど。
それから、ここに来た経緯を話しながら体温計を渡される。測定すると38℃あった。私が初めての数字に「おおー本当に風邪をひいている」と感動していると呆れられた。誰かに連絡を入れていた。無事だとか風邪だとか言っている。部活の皆だろうか。
「連絡入れなくてごめん」
「気にするな。だが、皆心配していた」
通話が終わったタイミングで跡部に伝える。まあ予想以上に元気だったがな、と言われ枕を投げたことを謝っておいた。
何か食べたか聞かれ、何もまだ食べていないことを伝えた。そうか、といい立ち上がる跡部。キッチンの方に向かうが、おい何する気だ。米は炊いてそうだななんて呟いている。
「ここ使っていいか?」
「何するの?」
「何か食べたほうがいい」
そう言い、なるほどこのまま看病していくつもりか。結構ですといっても、昨日といい彼の性格を考えると引かないだろう。
「栄養だよな。……生肉とかか?」
「私を殺す気か。腹下すわ。せめて生ハムにして。じゃなくて、お粥でしょう普通」
なんで生肉って発想になるんだ。野生生物か。布団に横になりながら突っ込みをいれていく。きっと彼も今まで風邪をひいたことがないのだろう。経験がないなら仕方ないか、なんて諦めの境地にいきそうだ。
「お粥か。……どう作るんだ?」
「病人に作らせるんかい!」
何しに来たんだ本当に。だめだこの坊ちゃん。そうこうしていると樺地が徐に準備を始めた。先ほどは額に氷をのせてくれたりしたし、樺地ほんとにお前ってやつは有能すぎるぞ。
樺地お手製の卵粥をいただき、私は再び横になる。とても美味しかったのでお礼を言ったら跡部が当然だと返してきたが、作ったの樺地だよね。
「うつすと嫌だから早く帰りなよ」
「お前が寝たら部活に戻るさ」
「手洗いしっかりしなよ」
「当たり前だ」
そう言い、私は静かに目を閉じる。しばらくして「また来る」と言って跡部と樺地は出ていった。
急に静まりかえった部屋に心細さを覚える。まあ、別に先ほどまで騒いでいたわけではないけれど、人の気配がなくなり自分以外から発する音がなくなるというのは、ここまで雰囲気が変わるものなのか。
ため息を溢し、布団を今より引き上げ、私は眠りについた。