第六章
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昨日は跡部以外のレギュラーが久しぶりにそろった日だった。芥川、向日は私とたけが半ば強引に連れて行った感じだったけれど。
遅れてきた私たちを日吉や宍戸、樺地が心配そうに迎えたが、私たちの様子から安心したような表情を浮かべた。
それから少しして忍足とうめが部活にやって来た。うめは忍足を侑士くんと呼んでいた。
あのあとの裏庭で、どのような会話があったのか想像するのは容易かった。
少し泣いたのか、目元を少し赤くしたうめに「おめでとう」というと「ありがとう」と笑顔で返された。
今日は部活指定日ではないが、自主練習としてコートは使用可能だった。
うめは青学と聖ルドルフの合同練習の手伝いが先に予定で入っていたためそちらに行っている。
関東大会のあの試合の後から跡部には会っていない。今まで会っていたのは殆ど部活の時だったと思い返す。その部活に跡部が顔を出していないのだ。お互いに学校には来ていても、会わないのも頷ける。
今日は自主練習でもあったため、それぞれがある程度やったら帰宅していった。
物品棚を眺めると、そろそろ買い出しが必要そうだった。今日あたりでも行こうか。そう思い、買い出しのリストを作っていく。うめも協力してくれた。
「まつさん、うめさんと買い出しに行くんですか?」
「うん。まあ明日でもいいんだけど、せっかくだし今日行こうかななんて思って」
そう言うと、俺も一緒に行きますと日吉が言う。自主練はいいのかというと、荷物を持つのも特訓ですとか何とか返された。それに体は休めた方がいいとたけさんに言われたと。確かにその通りだ。
うめと日吉と共に、顧問の榊に買い出しに行く許可を貰いに職員室へ向かう。
その途中にある理事長室のところで、理事長室から人が出てくる。その人物を見て私は最悪だと思った。
「まつ。丁度よかった。テニス部にいるんだってね。今向かおうと思っていたところだったんだ。久しぶりだね。少し背が伸びたかな。さっきまで理事長先生と話していてね。優秀だとお褒めの言葉をいただいたよ。今年度も特待生だって、流石だよ」
そう言い私の頭に手を置くスーツを身にまとった男。その後ろには正装をした初老の男が控えている。
日吉とうめが私が黙り込んでいるのに何か感じ取ったのかその男にむかって「なんなんですか」「ちょっとやめてください」と言いながら私の前に立つ。
「ああ、すまない。まつのお友達かい?」
そう言い男は私の頭から手を離す。軽くうなずき私は小さく言葉を話す。
「何しに来たんですか?」
「まつ。やっと色々と片付いてね、迎えにきたんだ。一緒に暮らそう。そのこともあって、今日は理事長先生に寮を出るかもしれないことを話していたんだよ」
「勝手なことしないでください」
男が私の手を掴みにこやかに伝える。言葉を遮るように、私は告げる。うめや日吉は黙って様子を見ている。
「今更、一緒になんて無理です。前も言いましたけれど、私は寮で暮らします。扶養は感謝しています。けど、私はあなたを父とは認めません」
「……そうだよね。ゆっくりでいい。けど、考えてみてほしい。僕もじい様もまつを待ってるから」
そう言い男は困ったように私に笑いかける。後ろに控えていた男が「旦那様、そろそろお時間です」と声をかけ、「また来るよ」といって去っていった。それに続くように控えていた男も「お嬢様、それではまた」と頭を下げて去っていく。
「まつ……。今の人って」
「ごめん、うめ、日吉。びっくりさせたよね。気にしないで」
「まつさん」
そう言い、私は「さ、早く榊のところ行こう!」といって2人の背中を押す。
私があの人のことを触れてほしくないことが分かったのだろう。二人はあの人のことを聞いてくることはなかった。それが何よりありがたかった。
その日は買い出しを終え、帰宅した。