第五章
Name Change
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あの子たちに呼び出された。私もこのままではいけないと常に思っていた。
やって来た裏庭。ここは嫌な思い出もあるけれど、まつと初めて出会った場所でもある。
二人の心配の眼差しを振り切り、裏庭に立っていると女子3人が現れた。真ん中の子は、1年のときのあの子だ。
「アンタ、なんでまたテニス部に行くとか言ってるわけ?」
「どの面下げているの」
「もうお辞めになったのではなかったのかしら」
そんなことを開口一番に言われる。
「全国大会はまだ終わってないから」
「終わったのよ。アンタたちのせいでね」
何でも彼女たちは私たちがレギュラーの練習をずっと邪魔していたからだという。それで実力が出せなかったと。だから青学なんかに負けたのだと。
なんて悲しい人たちなんだろう。私は憐みの目線を送る。その目に腹が立ったのか、生意気と言われ胸倉をつかまれる。私は、負けないと誓った。息を吸い込み彼女を見据えながら言う。
「今のはさ、あの試合をした皆に失礼だと思わない?」
「なによ」
「あの試合が全力じゃなかった?確かに私はマネージャーとか初めてだったし、迷惑をかけた可能性もある。けど、あの試合を、あの対戦相手を愚弄するのは許さない!彼らの努力を否定するなんて許さない!」
「生意気なのよアンタ!忍足様が負けたのも、アンタが色目使ったからでしょ」
「さっきも言ったけど、それは忍足くんに失礼だよ。そんな人だと思うの?あなたは忍足くんの何を見ているの?」
「アンタ、なんなのよ」
今まで強く言い返すことのなかった私が食らいつくため、彼女が怯む。手が緩んだ隙に彼女の手を引き離す。
「私は確かに忍足くんが好き。一度はその思いも捨てたけど、今はもう否定しない。好きだからこそ、応援したい。支えたいの。彼が好きなテニス部も」
そう彼女たちを見据えて言う。驚きの表情をした彼女たちはすぐに怒りの表情に変わる。「よくもそんなことを」と言い拳を振り上げる彼女たち。しかし、その拳は振り下ろされることはなかった。私はどうしたのかと彼女たちを見ると、驚いた表情で私の後ろを見ている。
「忍足様」
「他の方もなんでここに」
なんで忍足くんが、と思い私が振り向いたら温かいものに優しく包まれた。
抱きしめられている。
「うめ。まさかこんな形でうめの思いを聞くとは思わんかったわ。俺から伝えようと思っとったんやけどな。ほんまどこまでもアホな奴や俺は」
そう私に囁く忍足くん。顔に熱がいく。
「すまんな。前も言ったと思うんやけど、自分らの応援は応援とは言わへん。俺たちの大切なものを傷つけるのは許さへん」
私を抱きしめたまま忍足くんは彼女たちに言う。彼女たちは「そんな、なんで」と言っていた。
二度目となった彼女たち。私は忍足くんの名前を呼び、その腕から離れ、彼女たちに向き直り真ん中の彼女の名前を言う。
「もう、関わらないで欲しい。私はテニス部のマネージャーを全国大会が終わるまでは絶対に辞めない。皆を支えたい。だから、もう私やまつたちに関わらないで欲しい。あなたの為にも」
「私の為ですって?」
「もう関わらないと誓ってくれたら、私は今回のこれは見なかったことにするから」
なんて生意気なのなんて呟きが聞こえるが、前回の時、跡部くんに二度目はないと言われたのを思い出したのだろう。「わかったわ」と言って、去っていった。
「謝りもなしかよあいつら」
「関わらないと誓っただけいいんじゃない?」
たけとまつがそばに来る。私を信じて最後まで見ていてくれた二人には感謝だ。二人がいるから頑張れたと思う。
「許すのうめ?」
「うん。彼女たちもテニス部が好きなことには変わりないから。ただ、それがちょっと歪んでいるだけ」
それに、皆に頼れって言われたのに勝手にまた一人で突っ走ろうとした私への戒めでもあるから、と笑う。
テニス部の人がここに来ていたのはちょっとびっくりしたけれど、また助けられたことに感謝の言葉を告げる。
「にしても、鳳、失恋だね」
「うめさんが幸せになってくれれば、俺はそれでいいんです」
「お前良い奴過ぎるだろ」
「いや、まだ付き合ってないだろあの二人」
「うめちゃん。俺たちは一度だってうめちゃんたちを迷惑だなんて思ったことはないよ」
そんな会話をしている。鳳くん、滝くん、ありがとう。芥川くんが私に抱きつきながら彼らと同じようなことを言う。ありがとうと告げていると、まつたちが芥川くんを引きはがしていた。
「ほら、アンタらも部活いくよ」
「えー俺らもう引退だし」
「向日ーそんなこと言ってっから菊丸に負けるんだよ」
「クソクソ。それを言うなって。やってやんよ!」
そんな会話をしながら、まつは鳳、芥川、向日、滝とともに部活へと行った。
頑張れよ変態眼鏡と、軽く忍足くんの肩を叩いてたけも部活へ行った。
裏庭には、忍足くんと私の二人きりになった。
心臓の音がうるさく鳴り響いていた。