第五章
Name Change
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朝の挨拶を交わし、たけたちに昨日のことを話した。2人とも「仕方ねぇな」などと言いながらも、どこか嬉しそうだった。
青学は聖ルドルフとも合同練習をするらしく、それにもたけは手伝いに行くため明日はいけない様子だったが、今日は放課後3人で再びテニス部に向かうことになった。
たけやうめから昨日のそれぞれの様子を聞く。なんか、皆昨日までのたった数日でいろいろあったみたいだ。
たけは青学と不動峰の合同練習にマネージャーのような形で参加していたらしい。そして、その前日に不二に告白のようなものをされたとか。
「まじか……不二。やるな」
「確かにたけが周助呼びになってる……」
呆気にとられる私たち。
「それにしても、なんで昨日言わなかったのー!」
「だ、だって何かまつ昨日暗かったし!うめは美術部のことで頭一杯そうだったし!」
「そんなことないよ!」
「そうだよ!」
私たちが身を乗り出して答えると、「それに……まだ、返事してなかったし」なんて顔をほんのり赤らめていうたけ。なんだ乙女かよ。ピュアッピュアッだな。
「たけがピュアピュアの実の能力者になってる」
「どんな効果あんだよそれ。絶対ゴミ性能だろ」
「で、返事したの?!」
うめがたけに詰め寄る。そして間を開けた後、「した」と頷くたけ。この様子だと、きっとOKの返事をしたのだろう。
「全国大会絶対に連れていく、って言われた。私のためにも勝つって」
「不二、王子様かよ」
「いいね!」
私たちに祝福され、はにかむたけ。よかった。本当に。
そして、手塚が肩の治療のために九州に飛び立ったこともきいた。私たちとの試合のせいかと罪悪感を抱いたが、それは違うと手塚が言っていたことを告げられた。私に会いたそうにしていたとかもたけから伝えられたが、治療のためならばいつか戻って来るだろう。その時にでも声をかけようと思った。
治療と言えば、明日は17日。幸村の入院の日だと思いだした。部長不在の学校が2校。波乱の関東大会だ。
一方のうめである。こちらも衝撃的事実が発覚した。なんと、うめ自身が覚えているよりも前の時に、忍足と既に会っていたという。
なんでも、中学受験の日に忍足が消しゴムを忘れ、たまたまそこにいた初等部のうめが忍足に消しゴムを貸したらしい。うめ自身、まさかあの時の男の子が忍足だとは思わなかったようだ。
「私、はじめましてって言われた時、悲しかったけど、私も忘れていたからお相子だねってなったよ」
「にしても受験の日に消しゴム忘れるとかアホなのかあいつ」
「それで、電話しているあたりも謎だ」
「よっぽどテンパっていたんだろうね」
うめと忍足は、その受験の日と1年のクラス発表の時にそれぞれ会っていた。そして、3年の時にひょんなことからマネージャーをすることになりそこで再び出会った。まさかの偶然って重なるんだね。
そんな会話をして朝の時間が終わった。2人の嬉しいニュースにふわふわした気分になる。
休み時間になり、うめが美術部に構想練った紙を置いてきており、放課後テニス部に行くなら今のうちに取りに行ってくると行って教室を出ていった。
「まつ、今日は元気になってよかったよ」
「たけにも言われたけど、昨日の私そんな暗かった?」
「いや、暗いというより。辛そうだったから」
そう言われると、確かに関東大会後の私は少し落ち込んでいたかもしれない。それに、マネージャーとしてもっとできることあったのではないかと日々を振り返り悔やんでいたのも事実。
「そんなに思いつめないでね。俺たちはまつが笑ってる姿に元気をもらえるから」
「何それ照れる」
そう言う滝に今日は部活に行くのか尋ねる。今日は行くが、明日は実家の華道の用事があるから行かないとのこと。そういえば滝は華道一家だった。
「そういえばまつ、景吾君のことなんだけどさ……」
「景吾君?ああ、跡部か。跡部がどうかした?」
「いや……やっぱり、なんでもないよ」
滝の不可思議な言動に首を傾げていると、うめが戻ってきた。何かあったのか、こちらを見ている。その意味がありそうな目線にうめの方へ向かう。
はじめは普通にしていたが、私が何かあったのか繰り返し問うと観念したような顔をする。
「まつ。実は……呼び出された。放課後に来いって」
そう耳打ちされた。なんでも美術部の部室に行く途中に会って言われたという。またか、懲りない奴らだ。そう思っていたら、うめが強い眼差しで言う。
「大丈夫。私、もう逃げない。負けないから。だから、一人で行かせて」
そう言ううめの意思は固かった。たけにも話し、何かあったらすぐに止められるように傍にいるとうめに伝えた。
そして放課後になり、滝に用事があって部活に少し遅れると伝言を残し、私たちは裏庭の方に向かった。なんであいつら裏庭こんなに大好きなんだ。うめがここからは一人で行くと言い、私とたけは離れたところから見守っていた。
うめのもとに3人の女子が現れる。前回と同じ人物たちだ。
「あいつらほんとに懲りねぇよな」
「暇なんだよきっと」
「ほんまにええ迷惑や」
「関わるなっていうのをもう忘れてしまったんですかね」
「クソクソ。ほんとにとんでもない奴らだぜ」
「うめちゃん一人で大丈夫かな」
「ちょっとアンタらなんでいんの?!」
「声が大きい。ばれちゃうだろ」
私とたけの会話に、多くの声が混じる。後ろを振り向くと忍足、鳳、向日、芥川、滝がいた。何してんだお前ら。鳳と滝に至ってはジャージ着てるし部活抜け出してきたな。
なんでも、滝が私たちの様子をみて違和感を覚え、もしやと思ったらしい。それを部活に来ていた鳳や宍戸、日吉に相談した。行った方がいいとなり、全員を向かわせるのは難しいため鳳と滝で裏庭に向かった。その際に、向日や芥川、忍足に会い、血相を変えて走る2人に気が付き3人もついてきたらしい。
今回うめは自分一人で行くと言った。もっと俺たちに頼ってほしいと皆が口にする。
「ありがとう。うめああ見えて結構頑固だから、今はただ見守ることにした。もちろん危なくなったら行くけど」
そう言いうめと3人組女子との会話に耳をすます。