第四章
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立海との合同練習が始まった。
今はウォーミングアップがてら、それぞれコートで打ち合いをしている。少ししたら試合をするようだ。私はレギュラー以外の部員の方も回りつつ、試合に向けたスコアの準備などをたけたちとしていた。
「あいつら強いな。全国大会優勝ってのも納得する。まあ、まだまだすごい余裕なかんじだけど」
立海の練習の様子をみながらたけがいう。全国優勝を目指すならば、彼らとはきっとどこかで当たることになるだろう。そう思うと、今のうち情報収集もした方がよさそうだななんて思う。と言っても、どこまでこっちに実力を見せてくれるか分からないけど。
そう観察するように彼らをみていると、柳が私に声をかけてくる。
「そのような観察しているとはっきり分かる様子では、データはとれないぞ」
何か彼からは乾と同じような感じがする。
「ご助言どうも。氷帝のマネージャーしているのに、お恥ずかしながら他校の情報はからっきしなもんで。少しでも情報とろうかな、とか思ったけど……」
難しいものだね、とため息と共にこぼす。
「ふむ。お前たちは自分から志願してマネージャーになった訳ではないと聞いたが」
「ふふ、そうね。はじめは成り行きだったけど、今は気が付けば普通にマネージャーしているし、なんやかんや氷帝テニス部を応援している」
「そうか」
「柳たちは昨年度は全国優勝したみたいだけど、氷帝だって負けませんよ」
「面白いことをいう。だが、悪いが俺たちは必ず優勝を成し遂げる。立海も負けられない理由がある」
ガッツポーズをつくりながら言う私に柳は笑いかける。柳は優勝宣言をし、新たなデータが取れたといって去っていった。もしかして話しかけてきたのも、データを取るため?はじめは助言かと思ったが……柳、恐ろしい子。
試合を始めると声がかかり、それぞれコートで練習試合が始まった。確かに立海は強い。そう思わざるを得なかった。
王者としての誇りだろうか、このような非公式の試合でも気迫がすごい。立海の選手が、氷帝はやはり手ごわいとは口にするものの、試合結果は氷帝の惜敗が続く。そんな中、忍足がジャッカルに勝利した。
跡部がよくやったと忍足に声をかける。うめは忍足にタオルを渡していた。
「お疲れ様、忍足くん」
「堪忍な。けど、ジャッカルはダブルスがメインや」
「勝ちは勝ちです。あのスタミナお化けのジャッカルさんに、テクニックで短期決戦に持ち込んだのは流石です」
「さすが4つの肺を持つ男と言う異名なだけあった」
鳳たちが忍足へ言葉を投げかける。
たけが仕事をしているコートではまだ試合が行われている。
どれもすごい試合だと思っていると、突然大きな音がした。何事かと思い見ると、ジャッカルが倒れこんでいた。
どうしたのかとジャッカルの方に向かう。ジャッカルが向いていたであろう方には真田がおり、彼は手を挙げている。
「鉄拳制裁か。相変わらずだな真田」
ジャッカルの方に向かうとき、跡部がそう話しているのが聞こえた。真田が彼に鉄拳をくらわしたのだと理解した。
「ちょっと、いくら何でもやりすぎじゃないの」
「黙れ。俺たちは負けるわけにはいかんのだ」
ジャッカルを立たせながら私が言うと、真田はすっぱりと言い放つ。そして「赤也行ってこいと」次の試合へと意識を切り替えていた。
跡部はさっき、真田の鉄拳を相変わらずと言っていた。きっと負けたら鉄拳、立海のルールなのだろう。他校の方針に口をはさむべきではなかったか。けれど、そこまでする理由は何なのだろう。王者のプライド?何かそれだけではない様子もある。
私は真田と声をかけ、持っていた保冷剤を彼に渡す。
「なんのつもりだ」
「立海じゃない私が口を出すべきじゃなかった。ごめん。けど、その手。殴る方も痛いでしょう。それで少しでも冷やして」
「いらん」
「まあまあ。選手にとって大事な手を痛めて、氷帝に負けたときの言い訳に取っておくつもり?」
「なんだと貴様」
「とりあえずあげる。さて、大丈夫?ジャッカル」
「あ、ああ」
ジャッカルの頬は腫れている。新たに氷を持ってきてジャッカルに渡す。
「ありがとな。情けねぇとこを見られちまった。にしても、真田に口出しする奴なんた初めて見たぜ。さすが氷帝だな」
「……それは誉め言葉と受け取っておくね」
冷やしながら、彼は「俺達からしたら当たり前だが、お前たち他校から見たら変に映るよな」と言いながら、立海の掟について語ってくれた。
いままでも無敗で三連覇をめざしていたが、そこに更なる勝利への執着をもった彼ら。それは、病と闘う部長の帰りを、常勝で待つためだった。先ほど柳がいっていた、負けられない理由。きっとこのことだったのだろう。
「まあ、鉄拳はめちゃくちゃ痛ぇけどな」と言いながら苦笑いするジャッカルに話してくれたことのお礼を言う。
「てっきり真田が部長かと思ってた」
「よく言われてる」
やっぱりそうなのかと笑い、じゃあ私そろそろ行くね、といって別の仕事にとりかかろうとしたその時、
「まつ!危ねえ!!」
珍しく焦ったような跡部の声が響くと同時に、そよ風のようなものが吹き身体が横に引っ張られる。
私は何が起きたのか訳が分からないまま、気がつけば背中にぬくもりを感じていた。誰かに後ろから支えられている?
「全く。やんちゃなのはいいけど、危ないよ赤也」
私を支える人から、切原への𠮟責がとぶ。この声は聞き覚えがある。
「ゆ、幸村?」
「この前ぶりだね、まつさん」