第三章
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関東大会に向け練習に励む日々。宍戸も元の練習場所に顔を出すようになった。まだ正レギュラーには戻っていないけれど。
あの次の日、うめが深刻な面持ちで私に相談してきた。なんでも、あの後寄ったケーキ屋で、たまたま出会った人物を兄とたけが呼んだという。
たけはお兄さんを小学生の時に亡くしている。それも、ちょうどこのくらいの季節だ。
2年の時のちょうど同じ季節、いつもと様子が違うたけに気が付いた私たちは、何かあったのかと思いたけを元気づけるためにお出かけしたりした。そんな中で、私とうめに話してくれた。この時期はきっとたけがナイーブなる。お兄さんの話をするたけの様子から、お兄さんが大好きだったことを想像するのは容易かった。そんなお兄さんを亡くしたのだ。それに、たけはお兄さんを亡くしたと同時に大好きだったテニスも捨ててしまった。
うめから話を聞いた後、私はうめと共に、たけの元に行き話をした。その時にはもうスッキリした顔をして「大丈夫」と笑っていたが、まだ本調子じゃなさそうだった。
そんなことを思いながらスコアを付けていると、練習試合の方でなく、自主練習をしているコートで仕事をしているたけの方を見る。
やはりテニスに関わることが多いマネージャーは辛いだろうか。地区大会や都大会では、あまり普段と変わらず過ごしていたが……。もうすぐ関東大会だが、時期が悪そうだ。
「何を考えている?」
そう声をかけられ、前を向くと跡部が立っていた。「ねえ」と声をかけるが、逡巡する。たけをしばらくお休みにして欲しいとお願いしようと思ったが、それは私が勝手にやるべきことじゃないとも思う。口を噤んでしまった私に跡部が不審な目を向ける。なんだこら。
「たけに何かあったのか?」
「うーん。なんでそう思うの?」
「ここ最近あいつの動きが悪い。試合のコートには近づかねぇ。それに、お前たちがたけを心配そうにずっと見ているからな」
「よく見ていらっしゃる」
「お前たち2人は、4月の宍戸とたけが勝負したあの時と同じ目をしている。たけに何かあるのはバカでもわかる。監督から聞いた。たけは以前は海外で有名な小学生女子テニスプレイヤーだったとな」
跡部の言葉に私はそこまで知っているのか、と思う。あの時の私たちの様子を見ていたことも、榊がたけのことを知っていたのも驚きだ。確かにあの時は榊が気持ち悪すぎて、あまり気にしていなかったけれど、あれはかつてのたけのことを知っているような口ぶりだった。
「跡部の考えていることは当たり。けど、詳しいことは私からは言えない」
そう言うと、跡部はそうかと言い、たけの方へ行く。何をする気かと思ったが、なんと跡部はたけに「今日はもういい」と言い放った。
「跡部、何言っているんだC」
「動きが悪い。そんなんじゃあ、他の部員にも迷惑がかかる。今日はここから出ろ」
「……わーったよ」
「まて。家へ帰れとは言っていない。これを青学まで届けてこい」
そう言い、跡部はたけに紙切れを渡した。たけは青学ってどこだよ、と口にしながらこちらに来る。近くにいたうめもこちらに来る。紙の内容を見ると、合同合宿のことが書かれていた。
「合同合宿?」
「ああ、今度レギュラー同士、氷帝と青学で合同合宿を行う」
「へー頑張って」
「お前たちももちろん参加だ」
「え」
私たち3人の驚きの声が重なる。
「とりあえず、たけははやく行ってこい。今日はそのまま帰っていい」
「頑張ってねたけ」
「青春してますかーって聞いてきてね」
「はいよー」
そう言いたけはコートを出ていった。うめとともに手を振り見送る。それから、うめが向日たちに用事があったのか呼ばれそちらに向かっていった。
「跡部、ありがとうね」
「あーん?」
「変に気を遣わせた」
「実際に動きが悪いのは困るからな」
素直じゃないから分かり難いが、たけを気遣ってのことだ。練習に戻っていく跡部に改めて感謝を口にした。