第二章
Name Change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
都大会。越智南川、辰巴台東戦を負けることなく制し、氷帝は順調に勝ち上がっていった。
昨年度の覇者である氷帝はやはりギャラリーもそれなりに多かったが、準レギュラーが多く出ていることもあり、いつもの声援より少し控えめに感じた。
準レギュラーの海田や小川、近林、樫和たちは1セットでも落としてしまったことに悔しそうにしていたが、その表情は明るく、試合に出場できたことだけでも嬉しそうだ。彼らの様子を見て、この判断は間違いじゃなかったんだと振り返る。
都大会までいよいよあと数日となったあの日を思い出す。
メンバー発表後の部室のやり取りは記憶に新しい。
「ねえ、地区大会の時も思ったけどさ、このオーダー表どういうこと?」
「半分準レギュラーじゃんか」
「ほんとだ」
オーダー表を見つめながら、私たち3人は口々に感想を言う。
「俺達氷帝の準レギュラーは他校のレギュラー以上の実力だ。仮にあいつらが負けたとしても、正レギュラーが3試合でている。負けることはない」
確かにオーダー表は正レギュラーと準レギュラー半分半分であった。S1跡部は譲らないみたいだ。うめはそのオーダー表を眺めながら、大丈夫なのと心配の言葉を口にしている。
「心配無用だ。都大会くらいまではこれで十分だ」
そう言い出ていく跡部に私たちはそんなもんなのかね、と顔を見合わす。確かに地区大会は殆ど準レギュラーで出場していたが問題なく勝ち上がった。
「ほら、俺らって部員の人数200人以上と多いやん。公式戦に出られないままテニス部引退。それだけはできる限り避けたいとずっと跡部は思っとるんや。それぞれに出せるところで出す。まあその枠もだいぶ少ないんやけど」
忍足がフォローするように言う。他のレギュラー陣もそうだと頷いている。
部員全員を思う跡部らしいといえば跡部らしい。彼が部員になんやかんや慕われている理由も分かった気がした。
「まあ足元掬われないようにだけは気をつけろよー」
そうたけがいい、私たちは部室を出ていった。
なんとなく一抹の不安も抱えながらも、そう言われると納得しそのオーダーのまま今日の都大会3回戦を迎えることになった。
今日の対戦相手は不動峰中学校。
情報があまりなく分からないが、昨年度は何でもテニス部内で暴力事件がおき大会に出場できなかったらしい。いったい何があった。
情報収集がてらちょっと不動峰に行ってこようかなんて言ったら、そんなもの必要ないと突っぱねられた。完全に弱小チームと考えている様子だった。
氷帝対不動峰の会場は静かだった。
まさかの今まで負けなしできていた氷帝が、ダブルスを二つとも落としたのだ。それも6-4、6-1という結果だ。
それなりの数がいた観客も静寂に包まれていた。
観客の様子も気にせず跡部は余裕の表情だった。これからのシングルスはすべて正レギュラー。すべて勝てば問題ないと思っているのだろう。
次のシングルス、行うのは宍戸だ。宍戸も問題ないといった顔をしている。
「おら宍戸!わかってんだろうな!ぶちかませ」
「うっせえ。当たり前だ。20分で終わらせてやるぜ」
たけの檄にこたえながら、宍戸がコートに向かう。宍戸という正レギュラーがでてきたことで、会場の声援は急に賑やかになった。
序盤は宍戸が押していたが、相手選手が強烈なショットを放ち、試合の流れが変わった。
そして、そのまま流れは相手選手となった。会場の雰囲気が変わる。
「ゲームセット」その声が響くまでの時間は、15分。宍戸の宣言した時間より短かくして試合は終わった。
氷帝学園敗北の結果を残して。