第二章
Name Change
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「ったく、担任も人使いが荒いよな」
宍戸は教室に戻り一人ごちた。4限の最後に、担任から偶々頼まれた書類を職員室に届けてきたところだ。一人遅く昼休みにはいることになった宍戸はお弁当を取りに戻った。
昼は大体ミーティングも兼ねてテニス部で集まっている。1年のときなどはクラスごとに食べていたが、周囲からの視線がいたたまれないこともあり、自然とテニス部のメンバーで集まる形になった。
氷帝でテニス部は有名だと自分でも思う。強いのもあるが、それなりに顔もいいやつがそろっている。そんなこともあり、外面だけで応援しているファンも多いのも事実だ。
異性の友人は少ない。というより、皆無だ。多分テニス部みんな。忍足やジローとかはキャラもあって、仲良さそうな感じの異性がいるが、友人と呼べるやつかどうかと聞かれると疑問だ。どこか皆、居心地の悪さを抱える。俺というより、俺の肩書きや顔といった表面上のものしかみていないような気がしてしまう。自意識過剰と言えば自意識過剰かもしれないが。
ずっとテニス一直線であったから、異性のことなど大きく気にしなかったが、時折ふと彼女とかいたらどうなんだろうかなど思うことがある。
そんな中で、突如として俺たちの日常に食い込んできたあの3人の顔が浮かぶ。
あいつらは遠慮もなく、俺たちが苦手だと言った。
今までマネージャーを自分から採用しなかったあの跡部が、マネージャーになれと言った。俺と勝負したたけは口調こそ男のようだが、テニスも強く勝負は楽しかった。まつも口は悪いが、根が真面目なのだろう、マネージャーをしていて気が利くと思ったことがたくさんあった。うめも媚など全くなく、まさか幼稚舎から一緒だとは思わなかった。
3人が来てから、テニスの練習により専念できるようになったのも事実だ。皆、口には出さないがあの3人には感謝しているようだった。
下手に媚びてきたり、俺たちを慮ったりしない。自然な感じが居心地よかった。
そんなことを思いながら、教室をでると廊下でちょうど横から来ていた誰かにぶつかった。
「宍戸」と驚いたような声をかけられる。見るとぶつかったのは、今思い返していたまつとたけだった。だが、いつもと雰囲気が違う。
怒っている?
「あんたらのせいで……!これだからテニス部と関わるのは嫌だったんだ!」
「たけ、いいから行くよ!」
胸倉を掴まれたけに詰め寄られる。突然のことで戸惑う俺に、まつがたけの手を掴み制止の声をかける。
舌打ちをしたたけは俺を軽く突き飛ばすように離し、まつと共に走っていった。ちらりと「裏庭」という単語が聞こえた。
何だったのか分からないまま固まっていた俺に、友人が大丈夫かと声をかけてくる。それに「ああ」と生返事をし、テニス部のところに向かった。
きっとまた何か跡部あたりがやらかしたのか、とこのときは思っていた。
「遅せーぞ宍戸。先食べてるからな」
「聞いてくださいよ宍戸さん、滝さんまたうめさんたちを連れてきてくれなかったんですよ」
「だから、うめちゃんたちは此処に連れてくるのは厳しいって」
テニス部と合流する。岳人には遅いと言われたがそんなに経っていないはずだ。それぞれが思い思いにくつろいでおり、長太郎に泣きつかれた。あの3人がマネージャーになって1か月近く。長太郎はうめにとくに懐いている。前々から、ここにまつたちを呼ばないかと言った話が出ていたが、なかなか難しいようだ。
「悪い。担任に捕まった。それより跡部、またまつたちに何かしたか?」
「あーん?またってなんだ。なんもしてねぇよ。何かあったのか?」
皆に先ほどのやりとりを伝える。滝が終始険しい顔をしていた。
「ねえ宍戸。そこにうめちゃんはいた?」
「うめ?いなかったぜ」
「うめちゃんなら、ここに向かうときに階段のところで急いでどこかに向かってるの見たC。声をかける暇もないくらい急いでそうだった」
「え。けど、彼女今日は美術部の用事があるとか何とか言ってたよ」
「美術部の部屋に行くんなら、来る途中の階段ですれ違うはずないやろ」
皆のやりとりに、滝の顔色がどんどん悪くなっていく。
「探そう。彼女たちを」
「は?どうしたんだよ滝」
岳人が急に立ち上がって言った滝を見つめる。
「きっと、うめちゃんは呼び出しされているんだ。それも最悪の」
滝の発言に全員が息をのむ。そして、滝から今日の昼休みにまつとたけが話していた内容を聞いた。
俺達のファンクラブ。なんとなく耳にしたことはあったが、ほんとにそんなことがあったなんて思いもしなかった。
俺は二人が去っていくときに聞こえた裏庭という単語を思い出した。