第二章
Name Change
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氷帝は予想通り地区大会も無事に勝ち上がり、都大会に向けての準備を進めていた。この前、昨年都大会で氷帝は優勝していたと聞いて驚いた。
「都大会、初戦は越智南川ってとこみたいだよ」
「余裕だな」
「都大会だとウチ以外でどこが強いの?」
「それはもちろん青学だろ」
「青学?」と疑問符をうかべると、トーナメント表の青春学園と書かれたところを跡部が指さす。
「青春学園、だと!すごい名前!」
「だな!青春してんだろうなぁ」
「青春してますかーって聞いてみたい」
青春学園という文字面だけでテンションが高くなる私たちに若干の呆れも交えた様子で、跡部が話を続ける。
「ここにいる部長の手塚は全国トップクラスの実力者だ。ほかにも天才の不二やデータテニス、アクロバティックプレー、ダブルスの守りの要、パワープレーなど多くの選手がいる」
「へぇー。部長同士、跡部とその手塚さんが戦ったら?」
「もちろん勝つさ。俺様がな」
そう自信あり気に言う跡部に、「はいはい頑張ってねー」と返事をすると「お前なぁもうちょっと応援する姿勢を見せろ」と叩かれる。仕返しに跡部が皆にと出していたチョコレートを貰った。ちくしょうめちゃめちゃおいしい。こんないいものをこいつは普段から口にしているのか。他にも聖ルドルフ学院や山吹中も話題に上がった。
「にしても青春学園の部長さんって、きっとキラキラしたザ・青春みたいなイケイケな人なんだろうな」
そんなことを言っていると跡部が苦笑し、他の部員たちで噴き出している人もいた。
よくわからない反応に困る中、朝の予鈴が鳴りそれぞれが教室に向かった。
先にクラスに戻って座っていたうめに声をかけると、一瞬びっくりしたように肩を揺らし、机に何かをしまって挨拶をしてきた。そんなにびっくりする?
「どしたの?」
「別になんでもないよ。普通にびっくりしただけ。そうだ、まつ。今日の昼休み、先にたけとごはん食べてて」
「いいけど、何かあるの?」
「あ、うん。美術部のことでちょっと用事があって」
「そっか。おっけー。だってさたけ」
「オーケー牧場!」
古、と前の席で小さく突っ込みを入れた滝の頭をたけがはたいていた。
それから昼休みになり、うめはそそくさと教室を出ていった。
「昼ごはんも持たず、あんなに急いで向かうなんて、美術部って意外とハードね」
「芸術は爆発だからさ」
「いや意味不明。さ、昼ごはん食べよう。ほら滝どいたどいた」
「全く。そういえば昼、テニス部は集まって食べたりしてるけど、よければまつたちも来ない?」
「丁重にお断りします」
「折角のご飯が味しなくなりそうだしな」
滝の机を拝借し、二人で机をくっつけようと立ち上がる。
なんで昼までテニス部と一緒にならなきゃならないのか。
マネージャーを始めてから、もうすぐ1か月近くなる。あれからテニス部の連中とは、話はそれなりにするけど、あくまで今日の朝みたいなやり取りが多い。仲良しって感じではなく、それなりの距離感をもって接している。関わったらまた煩そうだし。親衛隊が。
それこそテニス部と昼食をとっていたりしたらそれはもう、絶対にリンチされるだろう。まあ、ただではやられないけど。陰湿なのは勘弁してほしい。
そんな感じの内容を話しながら、机をくっつけ、椅子に座る。話を聞いている滝を見て言葉を投げかける。
「それに、何かあっても守ってくれないでしょ。アンタたち。これは自衛よ自衛。はい、とっとと行った行った」
「俺は……」
何か言おうとしていた滝に、いいからいいからとたけが言い滝をテニス部のところに向かわせ、私たちは昼食をとった。
「あれ?あそこにいるの美術部部長じゃね?」
そう呟くたけの視線の先を追う。そこには、クラスメイトと談話している美術部の部長がいた。
「ほんとだ、美術部の用事終わったのかな?」
おーいと部長に声をかけ、うめの用事はもう終わったか尋ねた。
するときょとんとした顔で部長は話す。
「え。今日は美術部の集まりなんてないけど。用事っていっても、今は特になにもないと思う」
その言葉に私たちは凍り付いた。
部長に礼を言い、私はとっさにうめの机の引き出しをあけた。今日の朝、何かを隠したように見えた。あれはもしかして……
「おい、まつ。これ……」
そう言いたけが見つけたのは紙切れだった。
そこには
「今日の昼。裏庭に。一人で」
と書かれていた。