過去拍手文(二十四節気)
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「みょうじさん。ゴーヤーの面倒、見ておいてもらえますか」
任せたとばかりに託されたゴーヤーちゃんたち。沖縄の太陽をたっぷりとあび、表面は今あげた水が反射してキラキラと輝いている。眩しい。
あの言葉は、きっと応援に行けないことを申し訳なさそうにしている私を見透かしての頼み事だ。彼は気遣い上手で、スマートにそういう事ができてしまう。
彼の頼みとならば全力で行ってみせようと毎日欠かさず様子を見に来ては水を与え、草むしりや何やらを行っている。ゴーヤーの実がなった時は観察日記と称して写真に収めている。誰も周りにいないときは、早く大きくなるんだよーなんてゴーヤーちゃんに言葉を投げかける。
家の都合で本土から引っ越しをしてきて、生まれて初めての沖縄の地に戸惑いしかなかった。聞きなれない言葉が飛び交うなか中で、隣の席になった木手君。
はじめは同い年に見えないくらい大人っぽくて、丁寧な物腰に、おどおどするしかなかった。彼のクールな様子から、きっと私のようなおどおどしている奴はあまり関わりたくないだろうと、なるべく迷惑をかけないようにと距離をとっていた。
お互いに微妙な距離感のまま月日は過ぎていったが、ひょんなことがきっかけで仲良くなった。逆に木手君は私に嫌われていると思っていたらしい。お互いがお互いをあまり知らないまま勝手に苦手意識を持っていたということを知ったときは驚いたものだ。
今思い返せば大分挙動不審な奴だったな、と自分のことを振り返る。お父さんがヤのつく人だとかいう噂や、木手君自身にも殺し屋という異名があると聞き、いつ殺されるのかと冷や冷やして、勝手に怖がっていた。殺さないで!と言って呆れられたのは今ではいい思い出だ。
本土に向かった彼を思い返す。今頃、九州地区大会の決勝戦だろうか。どうなんだろうか。ネタバレ禁止と縛りをして、彼から直接結果を聞くためにあえて試合結果は調べないでいる。
いずれにしても沖縄のこの比嘉中を初の全国に導いける可能性が高いと聞いた。それだけでもすごいことなのに、彼は全国も取るという宣言のもと静かに闘志を燃やしながら本土へと渡っていった。テニスはあまり詳しくないが、今年の大会は群雄割拠の年らしく、どこが優勝してもおかしくないと友人がこぼしていた。
ここにはいない彼に、思いを馳せる。戻って来たら、なんと声をかけたらいいのだろうか。お疲れ様。ありがとう。
うーん。しっくりこない。
実ったゴーヤー皆で食べよう!それがシンプルでいいかもしれない。食べながら色々と話を聞こう。平古場君たちも交えて。
夏の暑さは、これからが本番だ。
風が吹き抜ける美ら海を眺め、深呼吸をした。
二十四節気 「大暑」