テニスの王子様
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「なまえちゃんが好きになるなら、きっと亜久津じゃないかな?」
「ほんとあんないい子が亜久津と幼馴染ってのがいまだに信じらんねー」
「え。亜久津先輩とみょうじ先輩ってお付き合いされているんですか?」
ひょんなことからはじまった恋愛話。亜久津にとっては興味のないことだと、いつものように机に脚を乗せて本を読んでいた。いつもといっても部活に来ること自体そんなに多くはないが。
そんな亜久津に突然と話をふってきた千石。無視を決め込んでいたが、千石というどこまでもコミュニケーションお化けの彼の口は止まることを知らず。気が付けば話は亜久津の幼馴染であるみょうじなまえに話が飛んでいっていた。
失礼なことを抜かしてくる奴らだと言葉を聞き流していたが、自身とその幼馴染の話題にどこか居心地が悪くなった。とんでもない発言が聞こえたが、言ったのが檀であるからか、亜久津は「んな訳ねーだろ」と呆れたように否定するだけだった。くだらねえと吐き捨て、読み終わった本を閉じて部室を出た。
「亜久津ー!明日も部活来いよー!」
「ふん。知るかよ」
「なまえちゃんもテニスをしている亜久津が好きだって言ってたよー」
「うるせえ!」
そんな会話をしたのが数日前。
はっきり言って腐れ縁。そう亜久津は思っていた。
目の前でだらしなく緩んだ顔をして幸せそうにケーキを頬張るなまえ。正直言って自分の好みのタイプとは真反対のやつだろう。そして、自分とも真反対なやつ。自分よりもお人よし同士、河村の方がお似合いなんじゃないかとさえ思う。
そんなことを考えながら、ふと、千石たちが口にしていた言葉を思い出す。なまえが好きになるなら、きっと俺だという言葉。
こいつは俺のことが好きなのか?
亜久津の脳裏をよぎる疑問。気になったら聞きたくなる性分の彼は目の前の人物に向け、口を開く。
「お前」
「ん?どうしたの、そんな真剣な顔して。ケーキ美味しいよ。仁も早く食べなよ」
ケーキを目の前にして、喧嘩でもおっぱじめようとしているような雰囲気の亜久津になまえは微かに笑う。
「……好きなのか?」
勇気を持って言った言葉。
だが、口より先に手や足がでる亜久津は、どこまでも口下手だった。好きか尋ねる主語に「俺が」という言葉をつけることはできなかった。
「え?うん、好きだよ。仁も好きでしょ?」
そして、その相手であるなまえは、どこまでも鈍感だった。
なまえにとって、好きなのかと尋ねられたことは、目の前にある「ケーキが」という主語と勘違いするには十分であった。
「はあ?んな訳ねえだろうが」
「またまたー。そんなこと言ったってわかってますから」
何を言っているのかと告げるような顔で、亜久津の皿にモンブランを切り分けてのせてくるなまえ。
自分が、なまえのことを好いている?
だが、堂々と真っ直ぐに好きだと告げ、笑顔で目の前にいるなまえ。その様子に心に何かがストンと落ちた。今までただの腐れ縁と亜久津は思っていたが、確かに悪くないし、寧ろいいのではなどと思い始めていた。
「また行こうね!好きな人と食べるとやっぱりより美味しく感じるよね!」
「てめえ恥ずかしげもなく、よくそんなことが言えるな」
「だって仁も好きでしょ?」
「うるせー」
「またまたー」
そんなどこまでも、主語がケーキか相手か、好きの対象を勘違いしたままの二人。
帰りの道、微かに顔を赤くしていつも以上に優しく接してくる幼馴染に不思議な感じを持ったなまえだった。
そんな口下手と鈍感の奇跡のコラボによる勘違いの出来事から数日たったある日のこと。
「よっ!お二人さん!最近どうよ?やっぱり、なりたてのカップルはお熱いねー」
「え?!ちょっと千石君!誰と誰が?!」
いつものように二人で並んで歩いてたら、なまえは千石に背中を叩かれた。だが、千石から全く理解ができない言葉を告げられ、目を見開くなまえ。
「ああ?!おいちょっと待て!どういう意味だ?!」
そんななまえの発言に、なまえの肩に掴みかかる亜久津。なまえが千石の方を驚くように見つめ、そんななまえを驚くように見つめる亜久津。その異様な光景に千石は目を点にしている。
「仁、それはこっちの台詞よ!」
そして肩を掴まれたなまえは亜久津に向かい合い、何か言い合いをしている。
「なまえ。お前、この前俺のこと好きだって言ったじゃねえか」
「いつ?!」
「あ?ケーキ食いに行ったとき、俺のこと好きなのかって聞いて、好きだよ、なんて間抜けな面で言ったじゃねえか」
「ええ?!あれは、どう聞いてもケーキのことが好きか、って聞かれたとおもうでしょうが!」
そもそも間抜けな面って何よ、などど続けながら、好きな人と一緒に食べるという言葉も主語が違ってたことを確認しあっている。
その様子から、千石はすべてを察した。
「最近やけに優しいし、隣によく来るけどそういうことだったの?!」
「てめえ何で気が付かねえんだ!」
そんな口喧嘩を繰り広げている二人を見つめる千石。
「けどさ、二人ともお似合いだと思うよ」
勘違いしていたとはいえ、ここ数日の二人は楽し気で幸せそうだった。
そんな千石の言葉に、顔を赤くしながら「誰がこんな奴と!」なんてぴったりの息で、言ってくる二人。ほらねと告げる千石は溢れんばかりの笑顔を浮かべていた。
18/21ページ